さすらいの用心棒

天晴れ一番手柄 青春銭形平次のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

3.6
銭形平次の若き日を、市川崑がパロディたっぷりに描いたナンセンスギャグ時代劇。


現代の日本。

強盗とパトカーの逃走劇アクションが映されると、「あ、間違えました」と舞台が江戸時代に切り替わってしまう。

そんな感じのスラップスティックなギャグが絶えず炸裂する。

他にも、銭形平次の必殺技である「銭投げ」を、銭を投げるのがもったいないということでゴムを付けて投げたり、大人数が画面の片方に押し寄せるとカメラが傾いたり、などケチ臭いことをいちいち斬新な手法で表現しており、飽きずに笑って楽しめる。

ただ、コントの連続性だけで一本の映画を持続させようとした結果、肝心のストーリーがひどいものになっている(笑)

本作は、時代劇を見て映画ファンになったという市川崑が初めて手掛けた悲願の時代劇でもある。

当初、市川は銭形役を池部良にするつもりだったが、田中友幸プロデューサーが会社から大谷友右衛門で一本やれというお達しを受けおり、市川の企画と結びつけたのがきっかけとなって変更したらしい。

根負けした市川は大谷を起用するも、熱心だったが、軽快さが出ていない、とのちに評しており、やはり納得がいかなかったらしい。

活動写真時代の画調を再現しようと、平面的でグラスステージで撮ったようなライティングにし、現像でフィルムにムラをつくるなど、かなり徹底してこだわったのだが、何度もいうように肝心のストーリーが弱く、「面白いシナリオで、楽しく失敗をした」と市川は語る。

本人が失敗作と言ってるけど、個人的にはどうしても憎めない映画なので、もうすこし広まってほしいところ。

どうでもいい話だけど、市川崑が最初に映像化した横溝正史作品は『犬神家の一族』だと思われているけど、実は「人形佐七」が数十秒だけ登場する本作が最初なのでした!