Oscar

コーダ あいのうたのOscarのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0

歌うんまッッッッ!!!!!!!(号泣)



音楽。歌詞。歌声。手話。主題。
全てが互いを邪魔せず完璧にいい状態で生きたままラストまで駆け抜けていった傑作。
家族で唯一の健聴者、しかし歌うのが生きがいの高校生という、もうあらすじの時点でなかなかにツラい未来が想像できちゃう女の子が主人公の本作。
そして実際見てみると想像以上にツラい現実がそこにはありましたね......

彼女はまさにあのToCoda記号の様に、健聴者の世界と難聴者の世界とを繋いでいる存在。
彼女の母親も言ってましたが難聴者の世界と健聴者の世界は全然違う世界なんですよね。
中盤ルビーが両親に音大に行きたいって話をした時に「彼女、歌なんか好きだったっけ...?」って2人がポカンとしてしまうシーンがありましたが、まさにあれが二つの世界のズレを上手いこと表してますよね。
観客の僕にとってはここまで散々ルビーと抱えてるモヤモヤしたものとか苦しみを歌に乗せて歌うシーンが続いていたから当たり前のように彼女が歌が趣味であることを両親も知ってるものと思っちゃいましたけど。
それを知るよしもないくらいに根本的に彼女と家族の間にはズレがあったんですね...

それを父親が実感してしまうシーン。あのコンサートですね。
サウンドオブメタルでもそうでしたが、難聴者にとって聞こえないというのは健聴者との身体能力としてのズレだけではなく、喜びや悲しみも分かち合えないというとても苦しいズレでもあるということ。
それは知らないとか感じられないとかじゃなくて、知ることがそもそも出来ないというキツい現実があるわけなんですよね。
それ故にその後のお父さんが歌っているルビーの喉に触れて泣きながら彼女の歌を感じようとするシーンは涙が止まりませんでしたね。
彼の今までの苦しみというか今までわかってやれなかったその苦しみとか。
うーん、なんかすごく優しかったなあのシーン。

からのラストのオーディション。
ま、あそこから多少強引な展開に感じられたものの、そんなのどうでも良くなるくらいに歌も歌詞も手話も最高なラストソング。Both Sides Now.
僕はさっき世界はふたつあるような言い方をしてましたが、違ったんですね。
世界ってのはきっと一つだけで、それをどの面から見るかってだけのことだったんですね。
それは世界でも、愛でも、家族でも、なんでも。
その実体は確かによくわからなくても、よくわからないからこそ面白いような。楽しいような。
それはきっと愛の幻想。人生の幻想。うん、そうだ、あとは酔いしれるだけだよね。
なんかそんな優しい気分のまま、いつの間にか涙が流れていた最高のラストシーンでしたね.........
優しい。優しいぜコンチクショウ。


ていうか今作なにが凄いって手話ですよ手話。
とにかくお父さんと兄貴の手話がとにかく凄い。良い。好き。かっこいい。
もう、なんか、下手にセリフ吐いて演技してる人よりよっぽどこっちの方が真に迫るというか、気持ちがまっすぐに伝わりましたね。
手話ってその手の仕草だけじゃなくて気持ちを伝えようとするその表情だったり身振りとかも言語の一つだと思うから、余計に強く感情が感じられたんだろうな。
兄貴、かっこよかったな......


そしてみんな歌上手すぎ問題。なんで単なる合唱クラスにあんな強者ばっか揃うねん。それとも向こうの平均的歌唱能力あれくらいなん...?ヤバない...?
やっぱりアメリカってすごい国やわ......
とりあえず歌声だけで感動させられちゃうのはなんかズルいですよね。


あとあの彼氏さんなんか見た事あると思ったらシングストリートの男の子やんけ。
大きくなったね〜〜〜!!!!(親戚のおばちゃん風甲高い声)


いやーこれは今年のアカデミー歌曲賞取りそうやな.........
Oscar

Oscar