ロビン

コーダ あいのうたのロビンのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
元ネタのフランス映画『エール!』は観ないまま鑑賞。

自分自身の夢と家族の仕事や生活も支えなきゃならない、そんな板挟みに悩む主人公ルビー。
家族だからこそお互いにありのままの感情を吐露するのだけれど、ルビー以外の家族は全員が聾唖者。
あまり考えたこと無かったけれど、自分以外家族が全員聾唖者ってあり得ることだよね。
観ていて親が子供のルビーに依存し過ぎて可哀想だと思えたりもした。
もっと彼女にも高校生らしい生活させてあげて欲しいし、子供は親の所有物じゃないんだからと。
しかしながら、親が五体満足な身体なのに働きもしないで子供に依存してるって話じゃないんだよね。
自分がもし聾唖者の親の立場で考えたって、娘に頼るしかないじゃない。
経済的な状況を考えたって致し方無いことだよ。
それがルビーの人生を縛り付けることになると分かっていても、自分達を見捨てるのかと言いたくなってしまう気持ちが痛いぐらい分かる。
世の中には親の介護にほとんど自分の人生捧げてるような人達だっているんだから。

それと手話による家族間の語らい・罵り合い、誤解を恐れずに言うなら、そんな手話表現が単純にとにかく楽しい!
そしてこの作品で“手話”というものがこんなにも雄弁に語るモノなんだと思わせられた。
本作は映画表現における相互理解の可能性を、ひとつ上のレベルに上げたと言っても過言ではない気がする。

それとあのベルナルド先生がとにかくいいキャラしてた!
あんな人に巡り会えてルビーは本当に良かった。

そして兄貴の妹にこれ以上依存したくない、兄貴として一家を支えたいだけどそれが難しいという彼の葛藤の描き方も素晴らしかった。

それと冒頭に父親が車で大音量でラップを流すときのベースの振動が好きなこと。
ある意味耳が聴こえない人はこうやって“音”を感じたりするんだという新鮮な驚きがあった!
それと聾唖者の家族が出す音(食器を出したり扉を閉めたり椅子を動かす等)に無頓着で家の中はけっこうやかましいなど、ユーモラスな中にも「そうなんだ!」と感じる発見が散りばめられていて興味深かった。

そして実際に聾唖者である俳優陣が本当に素晴らしかった。
特に手話と歌唱の両方をこなした主人公ルビー役のエミリア・ジョーンズの努力と才能はどれほどだったんだろうか。
この先間違いなく素晴らしい女優になると思う。

「ベイビーじゃない!昔から大人だ!」

【ネタバレ】
  ↓
 











この作品の1番の鳥肌シーンでありこの映画の醍醐味なのが、ルビーとマイルズのデュエットでルビーが圧倒的な歌唱力を披露している途中で、しばらく無音のシーンがあったあの演出!
劇場で観てる側と映画の演出側が完全に一体になっていた。
そして「健聴者にはこの気持ち分からないでしょ」って言われてるような気がした。

それと星空の下父親がルビーに歌ってもらって喉元に手をあてて、音を感じるところの演出も秀逸。
涙が流れてきた。。

それと劇中ルビーが母親に聴いた「私が聾唖者だったら良かったと思う?」という質問が忘れられない。
そして、生まれてくる時聾唖者であって欲しいと思ったというセリフ(手話)はちょっとショッキングだった。
普通は生まれてくる子供は、健聴者であって欲しいと思うのに。。
耳の聴こえない母親になるのがイヤだった、コミュニケーションできないと思ったというセリフ(手話)に心が痛む。
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