mさん

コーダ あいのうたのmさんのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

会話に動きがないけど
その会話が最小限で面白かった
だから飽きなかった

あとしっかりこっちが求めているお話をやってくれるのでこっちの興味が持続した。お話は家族から巣立つ子の話でラストの流れとかはものすごく予想ができる王道な物語なんだけど、自分以外全員がろう者っていうこの設定が新しくて、見ることができた。この話でしか描くことができない緊張感やハッとする場面が沢山あった。

お母さんに「ろう者として生まれてきた方がよかった?」と聞くシーンがリアルだった。普通肯定するのに、しっかり耳が聞こえてしまうと自分と違うから怖いと思ってしまった。と素直に自分の弱みを出す部分がリアルで会話として面白くて好きだった。

愛についての映画だと思う。
冒頭娘は家族のためを思って朝3時に起きて、常に通訳をする。彼女がコミュニケーションの一部となって機能しなければならない。家族も彼女を頼りにしてる。一見仕方がないし、愛のある家族のように見える。

だけど彼女は音楽をやりたいと思い始める。
普通なら娘を応援するべきなのに、今回は難しい。彼女はコミュニケーションに必須で、さらに彼女が好きな音楽を家族は全く享受することができない。そこで「愛」が都合よく利用されていく。家族を愛しているなら、今まで通りの生活をするべきなのか。家族と離れてはいけないのか。音楽は諦めるべきなのか。家族も彼女も「愛」という真っ当な理由で現状維持をずるずる続けてしまう。

しかしここで本当の愛が描かれる。
それは歩み寄る努力をするということ。
まず家族は彼女の歌う姿を応援する。
ここで更に好きだったのが父親が彼女の喉の振動で歌を聴くという部分である。単純に耳が聞こえない状態で音楽を聴いても何も伝わらない。実際発表会で無音になる演出があって、自分達もろう者の体験をするシーンがあるけど、全く歌が聞こえないとどう頑張っても評価できないことを実感する。あの家族が「よかったよ」と彼女を応援する場面も歩み寄りは感じても、やっぱり無理やりなんだろうなと思ってしまう。無条件に受け入れてる気がしてしまった。しかし、その後どうしても彼女の歌を理解したい。聞きたい。と思う父親が「もう一度歌ってほしい」という。その時しっかりと喉を押さえて声を聞こうとするお父さん努力を見て一気にこの映画が好きになった。

無条件に相手を受け入れるのは簡単だけど、努力して相手に歩み寄ることは本当に愛がないとできないことだと思う。

更に娘も歩み寄る。1度目の発表会ではやらなかったが、2度目の発表会では家族のために身振り手振りをつける。

この娘から家族へ、家族から娘への愛の応酬がとても素敵だった。
mさん

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