キノ

コーダ あいのうたのキノのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
大傑作。元作品派の減点も興味深かった。

序盤、音域測定で、ある曲を初回授業で歌わされる一連のシーン。でも、その楽曲は、家庭内で歌われたことも、歌ったことも無いと、はっと思った瞬間、私は「凄い」と震えました。台詞で説明せず、歌詞と真逆の心情を描写し、でも歌声に「ディーバ誕生」を予感させる。本作が減点されるのは、伝えたいことのレベル高すぎて、伝わってないからかも(だから0.5星減点)。このシーンの独唱→中盤の母の毒親台詞→ラストの独唱、という語りは見事。だから減点派が再視聴する時は、今作の表現の重心が、前作エールではなく、在米ろう者でもなく、作中の洋楽達にあると思って、歌詞字幕を鑑賞すると良いと思います。

音楽の「音を楽しむ」は、確かに現実逃避用「イヤホン」さえ含むけど、それは「大音響を尻で味わう」のと同レベル。本当は「楽曲が伝えたいものを、心で受け止める」のだと描くのが、あの名シーン(略)。我々観客は耳が聞こえるからこそ聴いたつもりの「音楽の本質」を映し出すのが、本作Coda。いや確かに「あいのうた」では家族愛を描くけど、単純じゃない。光と影の両面あって、むしろ「ちっとも解らない」。不定形で変化しつづけ、近づけばかすみ、触ることもできない――その愛を、この家族の中に描こうとした。

・・・と思います。

まるで教科書みたいな映画なので、上手くリメイクして、小学校音楽教材にして欲しいと思いました(決して小学校道徳ではなく)。

そういえば2024春のドラえもんが、もしかしてそのレベルに到達していたら凄いけど・・・
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