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劇場版 呪術廻戦 0のpiのネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「でも一人は寂しいよ?」
「僕の親友だよ、たった一人のね」

五条悟の孤独さに泣いた。「死ぬときは独り」だもんね。

以下原作ネタバレ


作者がファンブックにて、五条が夏油にかけた言葉は作中で言っているとしている。
これをわたしは「(オマエは※映画口パク)僕の親友だよ、たった一人のね」だと思っている。
この「たった一人のね」は”my one and only”と英訳されているくらいで「愛ほど歪んだ呪いはない」と言う五条からの十分歪んだ友「愛」の言葉ではないだろうか(このシーンまで劇伴がThis Is Pure Loveなのがまた良い)。
でも夏油はそれに気がつかず「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と言う。
「心の底から笑えなかった」と言われたからこそ、五条は親友だと伝えなければならないと思ったんだろう。
親友との10年ぶり2人きりの、しかも死の間際での会話でやっと本音を言えた夏油とそんな夏油を未だに親友と思っている五条との認識の差が切ないし、同時に五条の懐の深さも感じる。
五条の「親友だよ」と夏油の「親友だったんだ」からも感じる友情の温度差。
高専時代の夏油を心配する五条の「ソーメン食いすぎた?」のシーンからもその片鱗を感じなくもないけれど、五条はその辺不器用でわざと空気の読めない発言をしてるような気もする。五条に相談できなかった夏油も不器用ではあるのだが。

「たった一人の親友」というのは、文字通り五条にとって夏油が唯一の親友であるという意味と、この先夏油のような親友ができる・親友を作ることはないだろうとふたつの意味があると思う。「一人は寂しい」、「死ぬときは独り」というセリフの背景には夏油のことがあるのだろうと推察すると、なおさら五条の孤独を感じて切なくなる。

五条に「若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ、何人たりともね」と言わしめるくらい、大切な青春を一緒に過ごした親友である夏油。
そんな親友を手にかけたつらさ、そもそも離反の兆候に気づけなかったのかという後悔、五条には色々な感情があると思うしそれを想像するとこちらまでつらいけれども、夏油を自分の手で止められたのは親友としてできる最後のことだったんだろうと。
夏油も恐らく心のどこかでいつか五条に殺されることはわかっていたような気がする。
ミミナナが夏油を殺したのはたった一人の親友である五条だったからよかったと思っていたように、わたしもそれでよかったと思っている。五条でなければ夏油は最期に笑えなかったと思う。
五条は「俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ」って言っていたけど、友愛の言葉で夏油も救われたと、あの笑顔は本物だと信じたい。

夏油はとにかく真面目すぎた。普通は「せこせこ」と4461体(新宿と京都にも1000ずつ放っている+玉藻前で6442体?)もの呪いを集められない。「せこせこ」、五条が思い出横丁で夏油に「できもしねぇことをセコセコやんのを意味ねぇっつーんだよ!!」と言ったことを踏まえての表現だと思うと苦しい。百鬼夜行の地に新宿を選んだのも因縁を感じてしまう。
一方で幼児的な万能感を捨てきれなかったとも言えるかもしれない。里香を手に入れて世界を変えようとしていたとはいえ、自分にならできる、自分も最強になれると思っていたのだから(そういう意味では自他ともに最強と認めているものの五条の方が自身のできることとできないことを理解しているので余程大人である)。
乙骨に万能感や自己肯定という言葉を投げかけたのも自分に思い当たる節があったのだと思う。「大義」は少しとってつけたような感じがあると思っていて、五条と袂を分かち呪詛師となることへの不安や後悔を打ち消すために自己肯定をし続けてきたのではないだろうかと。
だからこそ夏油にとっては「信用か まだ私にそんなものを残していたのか」、「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と五条に嫌われている方が楽であり、詰ってほしかったのではないかとさえ思う。思い出横丁でケンカさせてくれなかったのは夏油の方なのに(本人は「ケンカしちゃってそれっきり」と言っているのでしたつもりかもしれない)、ずるい男である。
とにかく映画は原作よりも五条と夏油の関係性が描かれていてよかった。

1/8追記
ノベライズを読んでから観るとさらに良い。

2/7追記
本誌を読んでから観るとまたまたさらに良い。
乙骨、さすが初代主人公。
「先生に二度も親友を殺させない」

乙骨は「僕の親友だよ、たった一人のね」をどういう気持ちで聞いていたのだろうか。そしてその背景を知ったときに何を思ったのだろうか。
何よりも五条を最強としてではなく人として見てくれている乙骨の優しさに涙した。五条の願い通りちゃんと仲間が育ってるよ。

5/29 追記
人生で1番観た映画。この先これ以上映画館で観る映画はないと思う。35回(さとるごじょう)回でフィニッシュ。もっと観ておけばよかったと少し後悔したけど、きっと何回観ても足りないと思うのでよしとする。内容はもちろん、終映がつらすぎて別の意味で泣いた。
最後に舞台挨拶(中継)で製作側のお話が聞けてよかった。乙骨ビームは笑ったw
パンフに記載があったけど原作にはない四季の描写があるので季節の移ろいとともに楽しめた。5ヶ月間ありがとうございました。
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