JP

コットンテールのJPのレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
3.6
冒頭から、リリー・フランキーのやつれ方がえぐい。目は半分しか開いてないし、挨拶も返さない。本当に酒飲ませてるのかと疑うくらいフラフラしていて危なっかしい。
リリー・フランキーの青年期を演じる工藤孝生が、なんの説明も無くても若き日のリリー・フランキーと分かるレベルで似ていてすごい。顔だけでなく立ち振る舞いや喋り方までコピーしている。

東京からイギリスまでのリープ含め、この重ための内容を90分にコンパクトに仕上げた手腕に脱帽。過去を回想しながら湖へと向かっていく構成をうまく使った省略が◎

認知症で昼も夜もわからなくなり徘徊し、排泄もままならない状態になる明子。(この木村多江の演技もすごい。)手伝うと言ってくれる息子・トシに対し、兼三郎はそんな明子を見せまいとする。兼三郎の不器用さもあるが、「そんなことにはならないよ、大丈夫」と現実を直視しない彼の弱さのせいでもある。
明子の死後も、単独行動ばかりで孤独になろうとする彼の絶望を癒すような、イギリスの湖水地方の美しくのどかな風景!このクオリティのロードムービーは、日英共同制作ならでは。

ラストカットのうさぎを追いかける4人が、まさにピーターラビットの「4匹のうさぎ」そのものにも見える。
だとすればこれは、海の底で孤独に生きるタコだった兼三郎が、うさぎになるまでの物語だ。
JP

JP