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からかい上手の高木さんのJPのレビュー・感想・評価

からかい上手の高木さん(2024年製作の映画)
1.0
▼小豆島で全編ロケしてくれて、マジでありがとう

小豆島に3年住んでいた身としては、小豆島を舞台にした原作漫画に最大限の敬意を表し、一つの妥協もせずオール小豆島ロケを敢行し、実写邦画史に残してくれただけで、もう感謝しかない。
小豆島の美しい海と空の青色が、まるで青春の青さがそのまま残っているかのようでなんとも美しい。「島が昔のままで良かった」のセリフのとおり、そこで青春を過ごした者にとっては「青春の色」そのものなのだ。

「二十四の瞳」とか知らない全国の子供たちが、何十年も後に「小豆島…!私たちが若い頃には「からかい上手の高木さん」っていう映画があってねえ…懐かしいわ…。あの映画に憧れて小豆島に行ったものよ…。またお迎えが来るまでに、一度は行きたいわね…小豆島…!」みたいな会話するジジババになってて欲しい。その意味で「二十四の瞳」に次ぐ「小豆島青春映画」になる可能性を十分に持った作品だと感じた。

▼それにしたって退屈すぎる会話劇

しかし。残念ながらこれは原作の良くないところでもあるのだが、会話劇がつまらなすぎる。
アニメーションであれば、今作くらいのゆっくりとしたテンポの会話でも違和感こそないものの、肉体をもった俳優たちの会話でこれをされると、冗長すぎる。高木さんの歓迎会の居酒屋のシークエンスに至っては、一人の話者が喋り終えるまで誰も何も言わないから、居酒屋の同窓会のくせに静かすぎる!え?これ恩師の葬式だったっけ???
会話ってのはもっとこうセリフが躍動感を持って重ねられるものなんじゃないの?!なんかテンポがおかしいって!みんなジジイか?
あと内容もクソつまらん!
鈴木仁「些細なことで喧嘩しちゃうんだよね」
平祐奈「そう!私のウエディングドレスなんかどれでも良いって適当にあしらっててさ!」
鈴木仁「いやだって…何着ても似合ってて、可愛いんだもん」
平祐奈「…!!!」

…は?!「…ポッ♡」じゃねーよ!舐めんな!知らんやつの惚気話こんなゆっくり聞かされても1ミリもおもんないわ!
ほぼ全ての会話の先が読めてしまう浅さ。もっと深みをくれよ!どうした今泉力哉!?と思ったけどそうだ!今泉力哉脚本って、当たり外れあるんだったあぁぁ…!!(「愛がなんだ」「愛なのに」はめっちゃ好き)

というか西片も高木さんもみんな鈍感すぎる!告白されて「高木さんが好きな人…。真面目で…からかわれるのが好きで…ってもしかして…俺…??」じゃねーよ!10年経ってなんで脳味噌中学生のまんまなんだよ!
あと西片何回「え?」って言ってんだよ!高木さん好きなのは良いとしても、もはや挙動不審だよ!ずっと怯えてるようにしか見えんよ!
高木さんあんたももうやってること中学生の頃から変わってなくて、もはやbxxch!ただの悪女!今回町田くんまでたぶらかしやがって!何しとんねん!

あとあの結婚式のスピーチで駄々滑りしてる江口洋介!
「みんなも…特別だと思う相手には、ちゃんと想いを言葉にして伝えるんだぞ☆」
「…あれ?なんか…まるで先生みたいなこと言っちゃったなあ。はっはっは☆(とりあえず教え子に肩パン)」
頼む!どうにかしてくれ!この壊れた肩パン教師止めたってくれ!その後めっちゃ泣いてるけどあれも困る!中井のプロポーズに江口洋介しか泣いてないのよ!もうオッサン帰れ!何を見せられとんやこれは!やっすい朝ドラ見にきたんか?!

▼変わらないものの美しさ

高木さんが、まるで西片の中学生の頃の記憶が作り出した幻影のように見える場面が何度もあった。「島も、西片も、変わってなくて良かった」と言い、中学生の頃聴いていた、もはや場違い感しかないアニソンを、有線イヤホンをシェアして聴き、別日には恥ずかしげもなく口ずさむ。これは永野芽郁の可愛さで誤魔化されているが、子供のまま大人になってしまった、時が止まった存在のようにも見える。
体育教師になった西片の首にはストップウォッチがぶら下がっており、まさに「止まった時間」が宙吊りになっている。

▼映像作品なのに、言語化されてしまう感情

この映画で絶対的なルールになっているのが、「言葉にしない感情は伝わらない」ということ。登場人物全員がこの呪いに屈していく物語なのがちょっと残念。
確かに、普段の生活や仕事の場においても、コミュニケーションにおける言語化の重要性は感じる。だけど、だからと言って「言語化されなかった想い」を否定するのは違う。しかも、映画などの映像作品は、小説などの文字媒体にはできない「言語化されなかった感情」をそのまま映像で伝えられる強みがある。

しかも、今作では「からかうことは、『好き』よりもっと好きってこと」と言語化されるとおり、「好き」という想いを言語化せず、「からかう」という態度に変換し続けていた高木さんを肯定する物語。それなのに、「やっぱり言語化しないと想いは伝わらないよね☆ 好きです!付き合ってください!」「うん!というか結婚してください☆」「ハッピ〜!」じゃねーよ?!

町田「高木さんにとって、からかうってなんなの?」
…って「プロフェッショナル仕事の流儀」みたいにすなよ!思わず笑ってもうたわ!笑
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