すずき

シン・仮面ライダーのすずきのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
2.5
本郷猛は恩師である緑川博士によって、バッタの能力を得た改造人間バッタオーグへと変えられる。
緑川博士は優れた科学技術を有する秘密結社ショッカーの協力者だった。
だが特定個人の欲望の為に技術を悪用するショッカーに反発した博士は、娘のルリ子と本郷と共に、組織の壊滅を決意する。
だが間もなく、博士は組織の追手の改造人間クモオーグに殺されてしまう。
死の淵の博士からルリ子を託された本郷は「仮面ライダー」となり、ショッカーとの戦いに臨む…

「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」に続く、庵野秀明が独自の解釈で挑む特撮リブートシリーズ第3作。
しかしこんな言い方はしたくはないが、他に上手い言い方を知らないので言わせてもらうと、「大人の鑑賞に耐えうる作品ではなかった」。
「シン・ゴジラ」は紛れもなく「映画」だったし、「シン・ウルトラマン」もギリギリ「映画」の体裁は保っていた。
しかし本作はPG12なれど、「子供向け特撮映画」のジャリ感が特に強い作品だった。
毎年やってる東映の「劇場版・仮面ライダー●●」を観るつもりで、過度に期待しないで観るのが吉だ。

良くなかった所をいくつか挙げていくと、まず前半の構成がおかしい。
「シン・ウルトラマン」も、TVシリーズ総集編か、とツッコまれていたが、本作はそれに輪をかけて総集編っぽい矢継ぎ早な展開だ。
TVシリーズでやるか、映画でやるならもっと要素を削って、1つの軸を持たせた方が良かったのでは?
そして台詞も毎度の事ながら忙しい。何回「プラーナ」言うねん!

全体のストーリーも、一応は形になっている「作っただけ」の物語に感じた。
面白い物語にする為の、推敲の時間が足りなかったのだろうか。
主人公がピンチになる展開も、ピンチになってから数分も経たない内に都合の良い展開や設定で窮地を脱するので、忙しない上につまらない。

キャラクター達への漫画アニメ的な個性付けは、本作では更に磨きがかかっており、そこがまた嘘臭くて子供っぽい。
本作はちょっと混み行った設定を加えてリアル的な解釈をしたいのか、あくまで子供向けヒーロー作品としたいのか、2つのテイストがぶつかっている気がする。

そして何より!アクションが良くなかったのだ!
庵野監督は、「シン・エヴァンゲリオン」の時から思ってたけど、もうアクションの殺陣は出来ないんじゃないかな、特に実写作品では。
オープニングの戦闘員撲殺シーンは血生臭いアクションで良かった。
しかしPG12言うても、派手に血が出るのはその戦闘員撲殺シーンだけやん!
映画が進むにしたがって、ドラゴンボール感の強いCGアクションになってしまい、効果音こそデカいけど、格闘に重みを感じない。
そして最初の撲殺とは打って変わって、カッコよくライダーキックで決めてきまうのだ。
ここでもまた、リアル解釈と子供向けがぶつかっている。
脊椎ぶっこ抜けとまでは言わんけど、もうちょい「暴力」としてのアクションの見せ方なかったんかなぁ。
個人的な嗜好を言わせてもらうと、ドニー・イェンの「SPL」のような、暴力とケレン味のいい塩梅のアクションが見たかった。

良かった所は、昭和オマージュの演出や、庵野監督が好きそうなロケーションと構図、そして一文字隼人のキャラクター。
そして「ロボット刑事K」を思わせるロボット、ケイの不気味さ。