娼婦と幸福、あるいは哲学と人生。
初ゴダール。
パリを舞台に娼婦に身をやつしたナナの物語。
かつてタランティーノがウォン・カーウァイの映画をゴダール的と評して以来、気になっていた監督。めでたく初鑑賞。
観る人は選ぶかもしれないけれど、これは良い。
淡々と描かれる娼婦ナナの生活を通じて、人生のあらゆる要素を感じとることができそう。
それは幸福と不幸、思考と沈黙、あるいは信仰であったり、愛であったり。
一度通して観ただけなので、もちろん味わいきれていないのだけど、この濃密な空間はなんだろう。
ナナを演じるアンナ・カリーナの表現力が素晴らしい。客観的に見れば、不幸な環境とも思えるナナの生活だから、不安や悩みを抱いていることはその表情などで観ている者にきちんと想像させてくれる。
そんな中でも好奇心をもって生きることの喜びや煌めきのようなものまでも存分に感じさせてくれるのはお見事。
表面的な展開はヌーヴェルバーグということで察してほしいのだけど、ラストの余韻がずっしりとのしかかる。
映像はモノクロで、当然画質などは今と比べ物にならないけれど、作品の雰囲気は、不思議と古臭い感じがしない。時代を超える作品とはこういうものか。
名作巡りの旅 次回鑑賞予定「シャレード」