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草の響きのmmmのレビュー・感想・評価

草の響き(2021年製作の映画)
4.0
心に支障をきたし、妻とともに故郷の函館に戻ってきた男と昔からの友人
平行して、3人の若者の日々を捉えた作品

原作未読

海炭市叙景、そこのみて光り輝く、オーバー・フェンス(函館三部作)
きみの鳥はうたえるに続く、佐藤泰志作品の5回目の映画化。

どの作品も、各監督が原作の魅力を生かした演出をされているが、
中でも本作は、主人公に佐藤泰志氏本人の雰囲気を色濃く感じ、それがある種の生々しさと重さを感じた。
(舞台挨拶の監督のお話からは、実際、意図してそうした部分はあるようだ)

原作から設定が大きく変わっているようで、そのことに対する賛否はあるのかもしれないが、
妻という最も近い他人という存在は、引き寄せられたにも関わらず、互いに踏み込めないもどかしさという部分にリアリティがあった気がする。


3人の若者たちの存在や、彼らとの関わり方
最初は回想なのかと少々混乱したが、見終わった後に色々な記事を読んで、とあるシーンを思い出し、なんだか切なくなった。

精神的に立ち止まってしまった時の苦しさというのは、おそらく自分にしか分からないと思う、
分かってたまるかとも思う。

その危うさみたいなものを常に抱えながら黙々と走る男と、見守るうちに己の孤独に気づく妻、そこにフラットに入り込む友人
うまく説明できないが、もどかしさもありながら、それぞれがひたむきに前を見据える中に刹那的な光を感じた。

作品自体をどう解釈するかは人によって大きく異なると思うが、結論としてどうなったかというより、それぞれが、自分の答えを出そうとする過程として伴走するような作品なのかもしれないなぁ。

観終わった直後より、余韻が心地よい。

他4作も本当に素晴らしいので、気になった方はぜひ。


独り言
札幌は何度も行ったことがあるけど、ついででは行きづらい函館。
海炭市のラストシーンに魅せられ、函館を旅したことがある。
曇天が似合う海というのに不思議と心地よさを感じた。
ひたすら歩き、街の人と話、目的なく市電に揺られ、春先で肌寒い中、何時間も函館山から見た夜景は今でも記憶に残っている。
ラッキーピエロも安くて美味しい回転寿司も、また行きたいなぁ。(結局食べ物にいきついちゃうな…笑)
mmm

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