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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のメルのレビュー・感想・評価

4.5
1969年の夏にニューヨークのハーレムの公園で行われた「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメンタリーフィルム。
入場無料で6回にわたる観客トータル数は30万人。

ジャズ、ソウル、ゴスペル、R&B、あらゆるジャンルのブラックミュージックの名だたるスターたちが集まって行われたエポックメイキング的なコンサート。

当時のアメリカは公民権運動が盛り上がる中で、ケネディ大統領、マルコムX、キング牧師、R・ケネディが次々と暗殺され、ベトナム戦争の激化、改善されない黒人の貧困問題などなど、大きな暴動がいつ起きても不思議ではない時代だったという。

彼らの不満や憤りを音楽で何とかしたいと考えたのではないか…とナレーターは語っていた。

この年の同じ夏に開かれたウッドストック・フェスティバルもヒッピーや反戦を訴える人たちが3日間で40万人集まり「愛と平和と音楽の3日間」という副題を付け映画やレコードになり大ヒットした。

一方こちらのプロデューサーも色々なテレビ局に放映を持ち掛けたけど全て断られたと言う。
それが(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)という副題の意味するところ。

若くて才能溢れるスティービー・ワンダー、モータウンで活躍したテンプテーションズのボーカルの♪マイ・ガール♪
日本では♪輝く星座♪でヒットしたフィフス・ディメンションの♪Aquarius/Let the Sunshin♪をフルで聴けたのは嬉しい。
ブラックミュージック独特のパワフルなボーカルと華やかで鮮やかなステージ衣装。
50年前のフィルムが大きな破損も無く残っていたことに感謝です。

資金不足のため照明を使わず自然光で撮影できるようにステージを西向きに設置したというアイデアにも拍手を送ります。

私の1番の目的はニーナ・シモンをスクリーンで観ることだった。
登場した時から既に彼女は凄い熱量で圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。そしてミュージシャンでありながら活動家でもあった。

近年のBLM運動の流れを見ていると長年の悲しい歴史も理解できるけど、余り過激になり過ぎて周囲が嫌悪感に変わってしまうのでは無いかと不安になる。

信心を持ち合わせていない者としては、素晴らしい音楽は単純に素晴らしいと感動したいので、そこに挑発や政治的な思想が入るととても残念な気がする。

当時のニューヨーク市長のジョン・リンゼイ氏の登場や警備に当たったブラックパンサー党のメンバーが木の上から眺めていたり、殆ど黒人の中に少しだけ白人も居たりと色々な意味で本当に貴重な記録映画だと思う。
人類が初めて月面着陸したニュースもこのコンサート中に流れ、人々のコメントには納得させられるものもあった。

因みにウッドストックより少し早い8/9日に日本でも中津川フォークジャンボリーという野外コンサートが開催されて岡林信康、上條恒彦、五つの赤い風船などが出演してます。
ある意味、野外コンサートはこの時代の若者たちの社会現象だったのかも知れません。
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