dm10forever

6時間のdm10foreverのレビュー・感想・評価

6時間(2019年製作の映画)
3.5
【向き合い方】

個人的に開催中の「GYAO!さん、今までありがとう!勝手に大感謝祭」にて。

――ある若い女性が土に埋められた状態で6時間を過ごそうとする。それは、大きな恐怖と正面から向き合い、人生を変えるための彼女なりの方法らしい。そして、自分を土に埋めてくれと妹に頼む女性。思い込みの激しい姉に妹は反発するが、協力する。そして、凍りそうな寒い夜が次第に更けていく…(Filmarksあらすじより)

物語の冒頭で、これを「スラブの儀式」「戦士の葬式と呼ばれている」等の説明が入ったため、実際にこれがどういうものなのか?あるいはこれがどういう意味を持って行われているのか?ということを調べてみようと思ったが、残念ながら何処にもそれらしい記述はなかった。

なので、もしかすると「架空の儀式」か、あるいは相当昔にある部族(民族)の間だけで行われていたようなものが民間伝承的に細々と伝わったらしきものなのかもしれない。
いずれにしても真偽のほどは・・・というところ。

という前提で、なぜ主人公レナは土に埋まろうと思ったのか?そして、なぜその見届け人を妹のオリガに頼んだのか?この辺が物語の肝なんだろうな・・・。

物語では、季節的には春頃~初夏?のロシアが舞台となっていて地面には草木も生えているが、それでも夜間は凍えるような寒さでもあることが伺える。

そんな中、レナは妹のオリガに「自分は6時間土に埋まるから、6時間経ったら掘り起こしてほしい」というエキセントリックなお願いをする。
当然「は?なんですと?」となるオリガ。
色々と二人が語り合う中で、この姉妹はこれまでの間ちょっとギクシャクしていたことが伺える。
しかし、レナの固い決意に押し切られるような形で渋々大役を引き受けてしまうオリガ。

そして、真夜中にひっそりと二人は草原へ向かい、レナを土の中に埋めるオリガ・・・

「死(恐怖)に直面することで生を実感する」という目的にしては、やり方がえげつない。
他者、しかも妹に自分の命を預けるという方法は、可能な限り好意的にみれば「覚悟」とも取れる。
でも、普段からそういうやりとり(話し合い)を行わないまま、ある日突然妹にそれを背負わせるというのは、どこか「当て付け」的な意図すらも感じてしまう。
もちろん「家族という一番信頼できる人間」っていう理由もあったんだろうけどね。

でも、もしかしたらレナは自分の命と向き合うという形をとりながらも、妹との心の距離を知りたかったのかな・・・という気もした。

幼い頃にレナがオリガをトイレに閉じ込めたというエピソードが語られるが、その理由をレナは覚えていない。
(きっと私の気に障ることをしたからよ)
それはレナとオリガがお互い大人になっても、イマイチ腹を割って話せない微妙な関係性を物語っていたようにも感じた。

毎日ベッドの中で過ごしているときは、あっという間に過ぎてしまう6時間。
しかし「土の中にいるレナ」という事実が、二人の間ではその何倍にも感じられる。

時間が来て、急いでレナを掘り起こすオリガ。
体が冷えきってはいたが、何とか無事のようだった。
泣きながら必死にレナの体を温めるオリガ。
土から這い上がってきたレナはおもむろに草原の真ん中で放尿。

(自分は生きている)

・・・う~~ん、レナはこれで何を得たんだろう?
土に埋まって、自分自身を見つめなおして、生きる意味を考えて・・・。
冒頭のシーンを見ても、決してレナは貧しい暮らしをしているようにも見えなかったし、どちらかというと興味本位でこれを始めたようにも思えたんですね。
だからこそ、僕は「妹のオリガに命を託した」ということの方が大きな意味に感じたのかもしれない。
その辺のレナの行動原理がイマイチ飲み込めなかった・・というか、突然姉の命を背負わされる妹の身にもなってやれよと。

ロケーションはとても雄大で幻想的で美しかったなぁ。
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