キャサリン

こちらあみ子のキャサリンのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.8
メインビジュアルからのほほんユル邦画かと思いきや…強烈…。
あみ子の予測不能な言動を、徹底的に異物として描きつつ、でもその異物が悪いとも言い切れないし、異物を作り出してしまう周囲にも原因はあるし…
どちらが正しくどちらが悪いということでもないから難しいよね。

社会のルールにとらわれない自由っ子は魅力的でもありつつ、周りから見ればコブでもある。
(まさに自由の象徴=いじめの象徴ってことだけど)
私自身も子どもの頃は、いわゆる「社会」ではなくて、あくまで自分の世界の中で生きているような感覚があったかもしれない。
いつしか自然と社会のルールに従って生きられるようになってたけれど。
規律が全てではないとはいえ、生きるためにある程度の処世術が必要なのだとすると、それを身につけるのはやはり他者とのコミュニケーションだと思う。
ただ、それがうまくできない子たちもいるわけで。
そういう時に周囲の対応として、わからないものをコブとするか(非認知)、わからないものとしてでも接するか(認知)。
理解し合えなくとも、そこに認知するための努力はあったか?受け止めるだけの根気があったか?という皮肉さを感じたり。
そういう意味では坊主少年は唯一あみ子をしっかりと認知していたのだな、と。

監督インタビューのなかで、子役たちに"芝居をせずに、ただ話すように"と伝えていたとあったけれど、それがまさに、芝居の上手さ下手さでない、あみ子や周りの子たちの実存感を産んでいて、この監督…デキル…!となった(笑)
その分、コミカルな音楽やカメラで演技させているというか。
映画ってこういうのもありなのか、と新たな発見。

端正な画面のなかで音程を外しながら歌うあみ子、社会規律の代表選手・学校の制服とそれに合わないボサボサのあみ子。
いつまでも応答してくれない周りの人たちと、自由で愉快な幽霊の仲間たち。
あみ子はどちらの世界を幸せと思うのだろうか。
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