亜

こちらあみ子の亜のネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ハートウォーミング系では全くない作品。
あみ子はクラスに1人は居たような、状況の把握が得意ではない子供という設定で、それが周りから理解されず距離をとられるといった立ち位置。
多分、兄がそういうあみ子の理解者かつ世間へ馴染む架け橋となった存在だったであろう。
だけれど、義母の死産やそれによる家庭の変化、それはあみ子というよりもお兄ちゃんの方に重くのしかかった結果、家から遠ざかり非行に走る結果となったのではないか。
恐らく、父は義母に付きっきりであったろうし、義母の入院中は兄が家事やあみ子の世話などを担っていたのであろう…
そしてお兄ちゃんは繊細な人の心情を汲み取ることのできる人柄だったのではないだろうか。(あみ子が義母のほくろに注目し、それが義母にとって好ましくないことであったことを多分理解していた)
きっとお兄ちゃんはあみ子が嫌いではないだろうし、ただ家が、家での自分の立ち位置から逃げたかったのだと思う。
トランシーバーであみ子が助けてと言った時だけはお兄ちゃんは帰ってきたし…

最後のシーンでは、あみ子のイマジナリーフレンズたちがボートの上で手招きをしているように見え、それをあみ子は分かっているのかいないのか、定かではないが、あみ子は「呼ばれているけど行かない」という選択をした。私は手を振り返した=死は選ばなかったと考えたい。弟(妹)の死は理解していおり、死=家族が悲しむ、を避けたのではないかと考える。(この作品は死を通じてストーリーが転換していってるため、あみ子が死を理解してないとは考えにくい)
恐らく、あみ子が状況を把握していないなら、声をあげた応答やいくらかの能動的な反応を示したはずだ。

父は、苦渋の決断の上あみ子を祖母に預ける結果となった。
私はそれが最善だったと思う。義母は父を必要としただろうし、実際に世話をできるのは父だけだったであろう。
自然と近しい環境や周りに煙たがられない環境を、あの年齢の子供とっては特に、あみ子にとってもよかったはずである。
ただただ、祖母があみ子に対して理解を示してくれること、定期的に父があみ子に会いに来てくれること、お兄ちゃんが遊びにきてくれる未来を願うばかりである。

お兄ちゃんのこれからに幸あれ。
亜