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ナイブズ・アウト:グラス・オニオンのmのレビュー・感想・評価

3.8
ミステリーとしての奇抜さ斬新さを狙うあまりに後出しジャンケン・掟破り・雑な飛躍を乱発、それを作り手自身が自覚している故に台詞でその乱雑さを茶化し誤魔化し始めて、もはやミステリーの皮を被ったブラック・ギャグ・コメディと化した。これまでにない突飛な構造・構成なので一見面白いけど、これは本当に駄目だと思う。まぁ楽しいのだけど。中盤の速攻でゲームが破壊される所は笑ったし。

前作同様に金持ちの登場人物達をカリカチュアしすぎて、結果的に批判精神がペラく見えてしまうのは絶対に駄目だ。イーロン・マスク的な金持ちの滑稽さと卑劣さをおちょくるライアン・ジョンソン監督の精神には共感するけど、登場人物を駒として扱う為に簡略化しすぎて逆に敵に利する事になっている。ザックリ言うと、敵を馬鹿に描き過ぎると自分が馬鹿に見えるという事(実際に向こうが滑稽な馬鹿だとしても)。これは前作と同じ失敗をしていると思うのだけど、こうして今回もウケているという事はみんなこれくらい分かりやすくしないと伝わらないという事なんだからもう俺から言える事は無いです。
ラストの『破壊』も個人的にはカタルシスも少し感じて楽しくは見たけど、そんなに感情を単純にしちゃっていいの?この人の怒りや哀しみさえネタになってない?と疑問に思う。何回も書くけど、監督と思想的には近い故に余計に歯がゆい。

前作でアナ・デ・アルマスが全てを持って行ったように、今回も1番の儲け役は主人公の探偵ブランではなく事件の渦中にいる一人の女性である。この構成は素晴らしいと思う。
今回の儲け役を演じるジャネール・モネイは最高に超カッコよかったし同時にユーモラスでもあって、オイシイ役を活き活きとモノにしている。

個人的にこの映画で一番良かった瞬間は、中盤で視点が変わった後にバウティスタの恋人がそれまでの『若くてエロい奔放なオンナ』という男視点のペラペラな人物造形から離れて人間的で知的な面を見せる場面で、ここには作り手の思慮を一瞬感じた。なんかそういう所もっと大事にした方がいいと思う。ライアン監督・・「ブレイキング・バッド」でハエの回やってたあなたはどこに行ったのよ。「最後のジェダイ」以降なんかアレじゃない?


たぶん3作目も作るだろうけど、ブランの同棲してる恋人(たぶんそうだよね?)とのやり取りは観たいです。
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