フランスはマルセイユを舞台に愛する娘の無罪を信じて真犯人を探す父親の物語。
「巴里のアメリカ人」ならぬマルセイユのアメリカ人だが、異国の中で右往左往する主人公とそれを助ける感じのいいフランス女性とその可愛い娘、そしてなんといっても美しくかつ不穏なマルセイユの街並みと、映画になる要素が満載で、トム・マッカーシー監督たちによるこのオリジナル脚本ができた時点でよい作品になることは決まっていた気がするほど。
父親役のマットデイモン本人はとてもインテリな人物だがここでは肉体労働で身体は逞しいが何をやってもうまくいかないホワイトトラッシュを絶妙に演じているし、また、フランス人の女の子が後半になって突然大人びた表情を見せるなど俳優陣も素晴らしい。
近時「人生は冷酷なもの」という映画が多いが、本作はそれをミステリ要素と絡めて娯楽作としてきちんと見せているし、ロマンス要素も単なる観客の興味を引くためだけではなく「それでも生きていく」に繋がる事象として描かれていてすごく良くできている作品だった。
余談だが、女の子が好きなオリンピック・マルセイユのサッカー選手3人のひとりに酒井宏樹の名前を挙げていたのには単純に喜んだ。