rage30

スティルウォーターのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

スティルウォーター(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

娘の無実を証明する為に奔走する父親の話。

前半は娘の事件の真犯人を探すミステリー、中盤はフランス人親子との交流を描いたドラマ、後半は容疑者を監禁してしまうサスペンス…といった構成。

ユニークだと思ったのは、中盤で一気に時制が飛んで、主人公とフランス人親子が擬似家族化する様子が描かれる事。
本作がミステリーならば、そんなドラマよりも真犯人探しを続行するべきだと思うのだが、この描写があればこそ、終盤に容疑者を発見した時にサスペンスが生じる。
「事件の事は忘れて、今ある幸せを大事にすべきか?」、それとも「リスクを取ってでも、娘の無実を証明するべきなのか?」。

結局、後者を選択してしまう主人公。
劇中で娘が「正義よりも心の平和が欲しい」と言う場面があるが、人に寄り添う事よりも、自分の正しさに酔ってしまうのが悪しき男性性というもの。
ファルハーディー監督の『セールスマン』を思い出さずにはいられない展開だったし、解説等を読むに、トランプ以降の分断を象徴してもいるのだろう。

そして、もう1つ本作と特徴となるのが、英語と仏語が混在となった脚本。
ハリウッド映画で、ここまで外国語がフィーチャーされるのは珍しいし、言語が分からない事を利用した陰口や、何時の間にか言語を理解していく演出なども面白い。
言葉が分からない=他者が分からない…というのは本作に通底するテーマであり、それは同時に、言葉が分かる=他者を理解する事の尊さを表現している様にも感じられた。

ミステリー・ドラマ・サスペンスと3つのパートがそれぞれ面白いし、更にはそれらが影響し合い、映画をより奥深いものにしている。
2時間越えの映画は冗長に感じてしまいがちだが、本作に関しては、映画を面白くする為に必要な時間だったと納得出来る事だろう。
時間に余裕のある時に、腰を据えて見て欲しい作品だ。
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