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スティルウォーターのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

スティルウォーター(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ラストまではとても良かった。殺人の罪で刑務所に収監されている娘の無実を証明するために奔走する父親ビル、彼を支えるシングルマザーのヴィルジニーと幼い娘マヤ、この構図がとても良く、それぞれの登場人物もしっかりと物語の中に息づいていて素晴らしかった。差別的な発言をするおじさんにリベラルなヴィルジニーがブチギレるシーンで、ビルが「俺はああいう人達と日頃仕事をしている。今は娘のために目をつぶってくれ」と言うなど、キャラクターの描き方が非常に細やか。肝心の娘がちょっと傲慢な感じでありそこがマイナスではあったのだが、でも無実の罪で刑務所に5年も入れられていたらあれくらいやさぐれてしまってもしょうがないものかな、と擁護すらしていた。

ビルが真犯人と目される男を監禁しだしたあたりで「やっぱりそうなるか…」と切ない気持ちでいっぱいになった。ビルからすれば一度取り逃がしているだけにこうするより他が考えられないのもわかる。でもそれはやはり共に暮すヴィルジニーとマヤを危険に晒す行為となる。しかも彼はマヤに口止めまでしてしまった。あれだけ幸せだったのに家を出ていくビルの姿は、本当に心に来るものがあった。

しかしやはり事件の"真相"がしょうもないことが、この映画を凡作にしてしまっている。本当に残念。実は娘は無実ではなく、男に殺しの指示を出していたことが判明するのだ。「殺しではなく追い出してもらうだけのつもりだった」などと言っているが、であれば早々にそう証言すれば良かっただけの話。しかも理由も痴話喧嘩というくだらないもの。そうなってくるともう前半の傲慢な態度がより許せないし、娘を受け入れたビルを我々はどういう気持ちで観たら良いのかちっともわからない。しかもそれで映画は呆気なく幕を閉じる。これは"後味が悪く重いラスト"である、良い意味ではなくすごく悪い意味で。せめて父親に指摘される前に自分から言い出して反省の色を見せていたならまだマシだったかもしれないが、あの態度ではただ不快感しか残らなかった。
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