こたつむり

ブラック・ジャック ふたりの黒い医者のこたつむりのレビュー・感想・評価

2.4
♪ 半人前がいっちょまえに
  部屋のすみっこ ずっと見てやがる

『ブラック・ジャック』は名作です。
「命とは何か」「人間とは何か」を問いかけてくる“教科書”と言っても過言ではありません。日本人ならば老若男女問わず必読だと思います。

そして、本作はそのアニメ化。
しかも、息子(手塚眞)が父(手塚治虫)の仕事を評価して作り上げたと聞けば、鑑賞するのは責務。衿を正して臨みました…が。

うーん。
正直なところ、褒めるところが少ない作品でした。

例えば、全体的な雰囲気。
原作を活かす気持ちなのは伝わってきますが、絵柄と音楽が合っていません。物語だけで十分にアダルトですからね。下手に飾る必要はないのです。

また、何よりも微妙なのが脚本。
原作を切り貼りして構成するのは分かるのですが、その構築された向こう側に“意思”が見えません。手塚眞監督が何を語りたいかが分からないのです。

例えば、キリコを出した理由。
副題に「ふたりの黒い医者」とあるように、ブラック・ジャックとの関係性を掘り下げた物語ならば分かるのです。一方は患者を生かし、一方は殺す。そのスタンスを対比させて描けばカタルシスも生まれそうです。

しかし、そんな様子は皆無でした。
序盤はともかく、終盤に至っては「なぜ、彼はここにいるのだろう」と首を傾げたくなる始末。しかも、ご都合主義(というか距離感を喪失した演出)が蔓延るので肩も下がる一方です。

ぶっちゃけた話。
息子は父を乗り越えて一人前。周りから「もうやめて」と言うレベルまで物語を解体しても良かったんじゃないでしょうか。それこそ“猟奇性”を際立たせるのも一つの手段。“イマドキ”に合わせて配慮を積み重ねたら本質を見失うだけです。

まあ、そんなわけで。
巷の評判から期待値を下げて臨んだものの、それを下回る勢いで眠くなった作品。『ブラック・ジャック』を知らない人用…と割り切れば良いかもしれませんが…それなら原作を読むのをオススメしたいです。
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