mさん

前科者のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

前科者(2022年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

好きだった部分は
相手に寄り添うことの難しさについて考えさせられたこと。例えば、阿川が元受刑者工藤に寄り添おうと奮闘する。辛いことは耳を傾けて肯定する。優しく寄り添う。だけど工藤をそうさせてしまった加害者である父親に対してはそう言った態度を取ることができない。父親は工藤にとっては辛い存在であり、阿川は工藤の味方でいたいので父親に優しくできないのだ。同じ元受刑者であり、むしろ父に関しては更生することができているのに阿川の割り切れない態度は見ていて考えさせられた。誰に対しても同じくらい優しくはなれない。結局人に寄り添うということは、誰かの味方にたって、もう一方を敵にしてしまうことなのかもしれない。寄り添うことって何だろうと思った。このことは普遍的に人と関わる上で大事なことな気がする。

あと寄り添うことはお互いのプライベートを共有することなのかもなと思った。阿川は工藤に当初自分がこの職についた理由をはぐらかしてしまう。結局その後工藤は弟と自らの過去を清算しにいってしまうし、もしあの時阿川が自分の過去を話していたらもしかしたら何かが変わったのかと思う。最後しっかり阿川が自分の話をしていたのが良かった。あと同じく同居してる女の元受刑者との関係も最後はしっかり友達って言っているのがよかった。ただ少しきれいすぎるけど、(ああ言われたからこうした感がちょっと強い、惚れんなよーって阿川のセリフも要はやり返しな訳だし、向こうがそう言ったから、こうしたみたいな感じに捉えられてしまいそうだった)

ただ全体的に悪い意味で色々過剰な気がする

まず暗転がめちゃめちゃ多くてぶつ切りな感じがしてしまった。

あと説明が多すぎる。阿川の過去も一番最初に映像として出てて、そこから刑事との話でもう一回しっかり説明されて、最後に工藤の前で話してもう一回やって流石に何回も説明が入ってもうわかったよってなってしまった。

工藤の過去も同じくらい多かった
刑事2人がまず関係者をあたる中で過去の事件がわかるし、そのあとラーメン屋で阿川と刑事の会話でまた説明が入って、何回も映像としても入ったりしてもう充分です…となってしまった。極め付けは弟が銃で自殺した時に全部の辛い過去が走馬灯のように流れる部分。やりすぎだと思ってしまった。

あと悲劇的な物語にしたいという作り手の作為性が見えるくらい編集があざとかった。辛い瞬間の時だけ少しだけ映像をスローモーションにするみたいなことを何回もするし、ちょっと冷めてしまった。

凄く話はわかるし、いいところもあったけど
親切すぎる脚本とか、編集や演出があってこうなった。ただのアクションとかだったらここまでにならないけど、今回は製作者がここで見てる人も辛くなってほしいみたいな作為性を感じてしまった。それはエンタメとして消費する悪い部分100%な気がしてしまってあまりいいとは思えなかった。
mさん

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