わた

ディア・エヴァン・ハンセンのわたのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

かなり微妙。
精神科医の樺沢紫苑先生がメルマガで絶賛していた作品だから気になって観た。
アメリカのティーンエイジャーの自殺者数・精神病罹患者数の多さがメルマガで触れられていたのでそこを頭において、そういった深刻な悩みを抱えたティーンを題材にした作品だということを知った上で鑑賞。
なお、本作がミュージカルだということは完全に忘れていた。
で、見始めたら初っ端から歌ってるからあーミュージカルなんだと。
歌詞や学校での描写から、あ〜わかる、こういう孤独や心細さを自分も抱えていたなと自身の学生時代を回想しつつ、主人公に感情移入しそうになるんだけど。
ふと、この人歌うまいな、とか思ってしまうのね。
主人公役の方、疎外感や自己否定感を抱えた高校生の表情や仕草がとてもうまいなと思うしこれは自分だと思わせる力があるんだけど、歌ってしまったらやっぱりこの人は俳優であり、これは作り込まれた作品だという現実を思い出してしまうのよね。
孤独や自己否定感に苦しむ若者は、この作品に描かれている人物はまさに自分だ!と感じられるようなキャラクターと、現実を忘れてストーリーに没頭できる作品を求めているんじゃないかな。もう若者ではないけど、学生時代を振り返るとこの主人公のような気持ちをありありと思い出してしまうような自分は、少なくともそうなんだよね。
私ミュージカルって大好きなんだけど、これ系の題材はミュージカルって向かないと思うのよね。ドキュメンタリーを見てると錯覚するくらいのリアルさやシリアスさがほしい。俳優が演じてると思いたくないのよ。

で、微妙だと思った理由はもう一つあって、こっちのが自分としては大きいんだけど。
死者との思い出を捏造して遺族に語ってはダメでしょーーーーーということ。
校長室で言い出せなかったのはわかる。自殺を知らされたショックもあるし混乱してるよね。
でも夕食の席でも嘘を重ねてしまっていて、え?え?となったままストーリーが進んでいくのでその後ついていけなかった。
死人に口なしですよ、生前本人がやってないこと、言ってないことを捏造して語るのは完全に死者への冒涜でしょう。
しかも主人公の思いつきの嘘をつき通すのってだいぶ無理があると思うのよね。メールの偽造とか。学校で2人が親しくしてるところを誰も見てないのに学校のみんなが2人の友情を信じるとか。生まれたときから一緒にいる妹を主人公が騙せるっていうのもかなり疑問だった。

あと微妙ポイントもう一つ思い出した。追悼イベントで主人公がしたスピーチがバズるところ。そんなに大したこと言ってないよね?なのにみんな感動してて、え?これ歌ったことになってんの?と思った。
ミュージカルの世界では、登場人物たちが歌ったり踊ったりしててもそれは特別なことではなく、ただの会話として流されていくものだと思うんだけど、大したことないスピーチを感動ものとしてみんながとらえてるからこの世界でも歌として表現されてるのかと思った。なんかすごい混乱した。
でもその後の会話で"スピーチ"って言われてるからやっぱり歌ったことにはなってないのに、そんなに拡散されるほどのこと言ってたかな?という感じ。

こんなふうにいくつか自分の感覚と合わない点が消化されないまま話が進んでいったので後半はもうどうでもよくなってしまったよね。

よかった点は、母親役のジュリアン・ムーアが終盤で息子への愛情を語るところ。あーゆうのはミュージカルがいい。ジュリアン・ムーア、綺麗な女優さんだけどエイミー・アダムス演じるお母さんがツヤツヤの巻き髪で優雅な雰囲気なのに対し、ダラダラ伸ばしたパサパサの髪で疲れた感じが出ててよかった。そんな働くお母さんが息子を 一人で育てていく決心をしたエピソード、グッときた。

とりあえず期待を下回るストーリーと、ミュージカルの良さが出てない感じ、あとは、消えてしまいたいと思うほど悩みながら日々を生きている若い人がこれ見て勇気や元気が出るかはなはだ疑問という感じがしたのでこの評価です。
わた

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