カラン

地獄の門 4K レストア版のカランのレビュー・感想・評価

地獄の門 4K レストア版(1980年製作の映画)
3.5
アメリカのダンウィッチという地図にのっていない町で神父が自殺すると、生と死を区切っていた箍(たが)がゆるんで、死者たちが起き上がり、生者を貪り始めた、、、


ルチオ・フルチの3大傑作として『サンゲリア』(1979)、『地獄の門』(1980)、『ビヨンド』(1981)とするのが一般的であるようだ。残念ながら、『サンゲリア』に及ばない点がいくつもあった。

①SE

風と獣の声を混ぜたような不気味な低音が頻繁に使われていた。SEそのものは入念に作り上げた立派なものだが、音の出所を映して、人物にカットバックするのだが、役者の目線は適当だったりする。その効果が苦笑いだけのカットバックがやたらと多い。まあ、音だけだから、カットバックするしかないんだろうけど、役者本人なのか、監督の指示が悪いのか、とにかくせっかくのSEが効果的じゃない。

②出現

『サンゲリア』は地中から虫をつけたままゾンビがのさーっと起き上がる。作り込んだ死体のしつこく緩慢な出現が感動的だったのだが、『地獄の門』はコマ抜きしただけの省略によって出現する。ぱっと現れて、ぱっと消えて、またぱっと現れる。その合間にカットバックをすることも多かった。うーん。つまんないな、コマ抜きの出現。フィルムを繋ぎ直したんですねー、以上ってさ。

③メイク

最もがっかりしたのはゾンビたちの目。どろっと生々しい腐食メイクなのだけど、少なくとも片方の目は出ていて、人物たちをしっかり見ている。死人メイクの切れ目からのぞくその目が普通すぎる。で、上に書いたようにカットバックすると、犠牲者役の演者たちの目線がずれたようないい加減な代物だったりするので、余計にゾンビたちの目が普通に見えるのさ。

④アテレコ

舞台はアメリカのどっかで、警察の車両や看板に英語が使われているのだが、全てのセリフはイタリア語。言語選択はできなかった。アテレコのいい加減さも凄い。ぜんぜん口の動きと合っていないし、映画の舞台にもあっていない。そこにきて変人っぽい見た目はいいけど、カメラに対する演技がまったくなっていない役者たちなので、もう、はい、はいってしか思えない。

イタリア映画ってアテレコの歴史が長いんだよね。英語にしないと売れないみたいな意識もあったんだろうね。で、ヴィスコンティやベルトルッチの海外市場での成功がアテレコを永らえさせることになったんだろうね。アテレコにするのは、必要に応じて英語で吹き替えるっていうなら都合がいいからねえ。経済のことを考えると、目をつぶってあげたいけど、映画的には短絡的だよ。普通にイタリアを舞台にした方が面白そうだよね。



ゴア頑張ったんだろうけど、そして本来はそれだけでいいのだろうけど、色々と残念すぎて、頑張ったゴアの威力が減衰しまくり。『サンゲリア』で覚えた感動はどこにもなかった。



4KリマスターのBlu-rayで視聴。音声はモノラル。画質は普通。
カラン

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