ユーライ

梅切らぬバカのユーライのレビュー・感想・評価

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)
3.8
ちゃんと「映画」になっていた。講演を聴きに行くのではなく、劇映画である以上は娯楽として「楽しめる」ものであってほしいと思う。尺と合わせて品が良く、ウェットになり過ぎないのがいい意味で日本映画らしくない。バランス感覚が見事。思いを込め過ぎて作為が前面に出過ぎると下品になりかねない中で厳しくもなく優しくもない、押しつけがましくもない姿勢が胃もたれしない。かと言っておためごかしの軽さもなく、ファンタジーも何とか回避している。堀、扉、一階と二階といった距離を感じさせる画面が頻出するが、最終的にそれを越境させるのではなく、ファーストショットの梅の木の質感のように凸凹のまま残されていることが安易を回避するお話と合致する。ゴミを捨てる、髪を切る、爪を切るといった「共倒れ」を回避するために打ち捨てる不穏なモチーフが散りばめられるが、明白な一歩ではない緩やかな前へ向かう兆しに留める。アニメや漫画ではやれないような、地味過ぎる語り口が心地よい。フィクションにおける「ガキが品性良好」問題に抵触するかと思いきや、置いてけぼりにして一人逃げ帰ってしまうのが年相応のリアリティがあって良かった。
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