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殺人鬼から逃げる夜のbluetokyoのレビュー・感想・評価

殺人鬼から逃げる夜(2020年製作の映画)
3.4
非常にうまく作っているな、とは思うものの怖い映画を期待していると、期待外れに終わるかも。うまいというのは、主人公のろうあ者という立場を、普遍的な恐怖に見事に置き換えているところだ。世間や社会から孤立してしまうという恐怖のことである。たとえば、突然、ナチスから追われるとか、突然、犯罪者の汚名を着せられるとか、あるいは、スパイになって敵国に潜入するとか、そのバリエーションはいろいろある。そうなるのは、この映画に出てくる殺人鬼が、世間に完全に溶け込んでいるからだ。爽やか青年になってしまっている。
ただ、主人公は、結局は、世間の中にいるわけであり、味方も出てきて、最後は恐怖から解放される。なぜなら、世間から孤立しているのは、もちろん、殺人鬼の方だから。
もし、怖い映画にしたかったら、殺人鬼を明確に表現することだ。この映画の殺人鬼は、では、いったい、なんのために、襲ってくるのか、さっぱりわからない。理由もなく襲ってくる方が怖いように思うが逆である。殺人鬼に、襲う明確な理由があるからこそ、恐ろしいのである。台詞にそれらしきことが挟まれるけど、最後まで、なんのために襲うのか判らないままに終わってしまう。だから、なにかのゲームにしか見えないのだ。
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