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ニトラム/NITRAMのロビンのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.4
オーストラリア・タスマニア島の観光地ポートアーサーで起きた無差別銃乱射事件を映画化。
事件を起こした当時27歳だった犯人“ニトラム”がなぜ銃を求め、いかに入手しそして犯行に至ったのか。
事件当日までの日常と生活を描いている作品。

予告編観た時はそこまで良さげな感じはしなかったけれど、いい意味で予想を裏切る良作で劇場鑑賞して大正解!
とにかくカンヌ国際映画祭で男優賞受賞したケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技が圧巻。
開始数分で、彼の“ニトラム”の世界に引き込まれてしまう。
過剰な演出もなく淡々と物語が進んでいくのだけれど、一瞬も油断できない作品。
終始ニトラムの醸し出す静かなる狂気にドキドキが止まらない。
観終わった後もしばらくドキドキが止まらない。

そして劇中誰も彼の本当の名前を呼ばないことが気がかりだった。
実の両親でさえも。。
もし誰か一人でも"Martin"(逆から読むとNITRAM)と呼ぶ人が居たらのなら状況は変わったのかもしれない。。
観る側を寄せ付けない、ニトラムの圧倒的な孤独とその奥に潜む狂気。
正直、観ていて彼の決定的な殺人の動機は最後まで分からなかった。
鑑賞後の何とも言えない後味の悪さは『ジョーカー』のそれに近いような気がする。

最もゾッとしたシーンは一番の理解者であった父親が鬱状態になってソファーで寝たきりになっているのを、起こそうするシーンが怖くて感情の持っていきようがない。。

そして近所で日用品を買い物でもするように銃が買えてしまう恐ろしさ。
銃器店が本当は銃の取得には資格が必要なのに、資格のないニトラムにあっさりと銃を売ってしまう描写は何ともいえない気持ちになる。
お金さえあればこんなにも簡単に銃を持ててしまうのかと。
この事件の後に銃の取得を厳しく取り締まったようだけれど、現実問題として当時よりも銃の取得率は高いというのは皮肉でしかない。。
いつ第二の“ポートアーサー無差別銃乱射事件”があってもおかしくないのかもしれない。
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