鹿むら

ニトラム/NITRAMの鹿むらのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
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2022/036

自然の音や車で流れる曲、彼が聴診器で聴く自分の心音などを利用することで、わざとらしいBGMで過剰に盛り立てることがなくてよかった。でもその緩急によってかなり何度も良くない「ドキッ」を自分の中に感じました。

最悪の事件そのものは淡々と描き、ほとんどの時間をニトラム自身やその周りの人物の描写に割いているので、ああ…どうにかできなかったものか…とかなり悶々とさせられた。お父さんに掴みかかるシーン、映画館にいた人たちの身体が硬直するのを空気で感じた。

簡単に語り尽くせない気持ちに溢れた今作、その語り尽くせなさを語らずして語る(←意味がわからない)描写が映画として素晴らしかった。スノードームを撃って壊したり(個人的にここがかなり辛い)、事件のニュースが流れる室内のテレビを背に煙草をふかすお母さんなど…度肝抜かれる構図や描写が多かったなあ。

わんちゃんに危害を加えなかったこと、お母さんの開襟シャツ×ボーイフレンドデニムのスタイリングが若々しく素敵!と思えた時間があったのが救いでした…かなり自分の暗い部分を刺激されてしまったので、影響されやすい方は本当に視聴のタイミングを選んでくださいね。
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