櫻子の勝手にシネマ

ニトラム/NITRAMの櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.0
1996年4月28日にオーストラリア、タスマニア島のポートアーサーで実際に発生した銃乱射による無差別大量殺人事件を、事件の犯人であるマーティン・ブライアントの生い立ちを絡めて描いた実録犯罪映画。
監督はジャスティン・カーゼル。

タイトルの『NITRAM』とは、主人公マーティン(MARTIN)を逆さ読みしたもの。
知的障害を患うマーティンを馬鹿にするクラスメイトたちが侮蔑の意味をこめてつけたあだ名である。

事件の概要を読んだあと映画を観たが、ずいぶん脚色されている印象だった。
特に懸念を感じたのは、“女性からの愛があればこの男は犯罪を起こすことはなかった”と暗示させるようなストーリー展開の部分である。

ニトラムとヘレンの関係は映画で描かれているような“ほのぼの”としたものではない。 
実際の2人の生活はかなりぶっ飛んでいたらしい。
特に金銭感覚が異常で、劇中では車を1台プレゼントする設定だったが、実際は30台以上買っていたそうだ。
また、猫は40匹ほどの多頭飼育状態にあり、通報されるレベルだったらしい。
因みに、2人が出会った当初の年齢は、ニトラム19歳ヘレン54歳だ。

映画の最後に『ポート・アーサー事件』についての説明がある。
死者35人、負傷者23人(公式HPでは15人と記載されている)という大惨事であり、この事件の後、オーストラリアでは銃規制の機運が高まったらしい。
事件から僅か12日後に銃規制法が成立し、国内すべての銃が国に買い上げられ処分となったそうだ。
けれど、1996年に起こったこの事件当時よりも多い銃器が、現在もオーストラリアに存在すると言われている。

現実は…なかなか難しいようである。