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パリ13区のらのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
3.8
ジャック・オーディアール監督作と言われなければ分からないような、なんだか軽やかで、それでいて成熟感のある作品。オーディアールは男っぽい映画を撮るイメージがあったので、共同脚本を手がけたセリーヌ・シアマとレア・ミシウスの貢献はかなり大きいのだろう。さらに、原作は日系アメリカ人のエイドリアン・トミネのグラフィックノベルであるし、多様な価値観や視点がパリ13区(パリであってパリでないような)を舞台にシンプルなロマンティック・コメディとして結実している感じで非常に良かった。

洗練されたモノクロームの映像が美しくてオシャレだが、現実みを欠いているわけではなく思いきり現代的なテーマが反映されている。なおかつ、貧困などでどうしようもない状況にあるわけではないものの一抹の不安や孤独を抱えている人間たちの営みをキャプチャーしているあたり、ノア・バームバックの映画に通じるようなものも感じた。ただし、人種はもっと多様である。
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