ピロシキ

わたしは最悪。のピロシキのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.6
ひと昔前なら「子どもを育てる覚悟のないこの女こそが、まさしく子どもなのだ」と突き放すような物語に仕上がっていてもおかしくないトピックかもしれない。しかし今や、そんなことをわざわざ映画で語ろうと思い立つ人はどこにもいない。そんな人のほうがよっぽど時代遅れでダサくて「最悪。」だから。ほんでSNSでめっちゃ叩かれるから、である。

冒頭「序章と終章とその他12章から成る」という紹介に「けっこう多いやんけ…」とため息が漏れそうになったが、数分で終わる章もあって、緩急のついた2時間だった。過去の男たち、今の彼氏、そして新たな浮気相手とともに、絶妙に地に足がついていない人生を送りつづける主人公。現実を文字通り一旦停止して、むきだしの願望が再生を始める一連のくだりは、ポスターにも使われているシーンでハイライトだった。この充実感に満ちた顔を見よ、ってもんである。

マジで自分最悪な人間なんすよ、と言ってはみても、心のどこかで誰かからの「そんなことないよ」のツッコミを待ってしまっている。自分にとっては最悪でも、それが誰かにとっての最高になれれば、自己肯定感とやらはきっと上がっていくものなんだろうけど。
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