スズランテープ

わたしは最悪。のスズランテープのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
2.8
好みではなかった。
ファーストショットは主人公を真ん中に配置して、周りの空間に圧迫されるような主人公の焦燥を感じてこれは面白そうだと思ったのだが・・・。

ナレーションと音楽によってクールな雰囲気のリズムを作ろうとするのだが、とにかくそれが上滑りしている。大袈裟な演出の連続で冒頭のショットのような落ち着きが感じられず、導入段階で登場人物とストーリーに関心が湧かなかった。劣化版エリックロメールみたいな会話も鼻につくだけでつまらない。この導入のイメージをずるずる引きずってしまい、キャラへの愛着を抱けないまま終わってしまった印象。

この手の映画でキャラに愛着を抱けないのは致命的で、テーマとか主人公の感じていることは私の個人的な部分に刺さりそうだったものの、どうしても最後まで見るのが苦痛だった。

ポスターにもなっている時が止まるみたいな気を衒った演出にもノレず。ただ白夜のオスロを歩くパーティー帰りの主人公のシーンはハッとするほどよかった。あの演出の方向性でまとまりがあったらかなり好きな映画になっていたと思う。

テーマや終盤の展開は一番好きな類のものであった。しかし主人公が何者にもなれたのに何者にもなれなかったというのが何処かで引っ掛かっていた。何者にもなれない人間がやはり何者にもならないという方が、よりヒリヒリしたリアルな人生を見ることができると思う。優秀で異性にモテる主人公という設定なので、そもそもの悩みの階層がどうしても高次のものになってしまう。まあそこで哲学的なテーマを描いているので良さではあるのだが、私のような視聴者から見るとギャップが生まれてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。

これほど好きなことを描いているのにハマれなかった映画はなかなかないので逆に興味深い映像体感だった。
スズランテープ

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