Jun潤

わたしは最悪。のJun潤のレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.7
2022.07.25

Filmarksで好評を見て鑑賞。
あらすじを読むとなるほど恋に夢にと人生の岐路に立たされた女性にフィーチャーした物語とのことで…大好物ですいただきます。

医学部生のユリヤは、日々の勉強に辟易としていた。
人の肉体ではなく、魂や感情に興味があった。
やがて臨床心理士の道、そしてカメラマンの道へと進むこととなる。
その中で出会うアクセルとの恋、そしてアイヴィンとの禁断の逢引。
果たしてユリヤに待っている未来とはー。

ふむふむ、これはなかなかいい感じ。
普通のようで普通じゃない、特殊なようで特殊じゃない男女の恋愛の行方と、結婚や出産、自身のキャリアについての悩み。

個人的に印象的、というか好意的に受け取れたのは12個の章に分かれていたことですね。
121分という長めの尺の中で、今の話のテーマが何なのかが分かるだけでなく、1人の女性の人生の追想という、終わりの見えない物語が、最初に12章までありますよと言われていたことで間伸びするようなこともないし、区切りがあるから、終わりが見えているから、各章を楽しみつつ、あとどれぐらいでユリヤの物語が作品としての結末を迎えるのかが終始分かっていたのは良かったですね。

個人的に今作は、「知らないからこそ幸せなこと」「知っているからこそ縛られること」を描いていたんじゃないかと思いました。
プロローグで描かれたユリヤの、良く言えば賢く物事を俯瞰で見ていること、悪く言えば小賢しいことが、後々のアクセルとの結婚や子を成すということ、アイヴィンと出会って知らないことに飛び込んでいくことに繋がり、知らなかった本当の純粋な愛情、知っていたはずの現実に直面するという、ユリヤの人生としても、今作の物語としても、言いようのない虚しさや儚いメッセージに至ったのだと感じました。

邦題の『わたしは最悪。』、英題の『The Worst Person in the World』(世界で一番悪い人)というのが、誰にとって、どこと比較してなのかを気にして見ていましたが、おそらく病床に臥したアクセルがユリヤに言った、「君は最高だ。」に対するユリヤの自虐的なアンサーが、タイトルに繋がっていたんじゃないかと思いました。
Jun潤

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