Kuuta

わたしは最悪。のKuutaのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.4
連想したのはスワロウと脳内ニューヨーク。

「詰め込まれる」ことへの嫌悪感と「吐き出す場がない」閉塞感。タバコの煙、嘔吐や排泄を通した解放→根底に妊娠、出産=吐き出すことへのプレッシャーを受け続け、時間経過(肉体の変化)に神経をすり減らす。そんな彼女が、エピローグでは自分のペースで「物を生み出す」ようになる。

・ナレーションを介し、フィクションの登場人物に自らを置き換えることで人生を俯瞰し、目を背ける。行き詰まった感情はネットに書いた文章がバズる事で小さく昇華されるものの、それが「自分自身の話」だと指摘された時、彼女は必死で否定する(こういうのをつらつらと書いてしまう私にも刺さる)

加工された世界を抜け出し、自分の足で歩き出そうとすると、彼女を苦しめてきた時間経過が止まり、自由な瞬間が訪れる。後半はセリフや行動を誘導するナレーションが消え、「現実」の時間が流れ始める。終盤、もう一度歩くオスロは、生々しい動きに溢れている。漫画の発表会の帰り、キッチンで別れを告げるシーン、そしてこの海岸の場面と、彼女が能動性と発揮する時(いずれもマジックアワーだ)、訳も分からず涙が流れる。

エピローグ、対照的に分かりやすい涙を求められ、女性が着飾るを得ない現実を描きつつ(主人公の祖母も役者だった)、きちんと彼らを「眼差す人がいる」と示して終わる。この辺もスワロウのラストを思い出した。

・前半の世界を敢えて否定しないまとめ方。彼の見ていた「色を引き継ぐ」という表現。そこから何を生み出すか。彼女は写真を選ぶが、ラストシーンが面白い。写真集のような「物」ではなく、デスクトップ上の「データ」。デジタルの中にあるリアル、虚構と共存した現実。このバランスは今っぽい。

・話はなるほどなあと思って見ていたが、映像的にはハマらなかった。特に後半、会話が多くて画面が動かん…。結局マジックアワー頼り?

・ラジオ番組のくだりはTwitterで無限に見るやつだった。娼婦と言った時点で議論が途切れる流れ、人気漫画家をフェミニストに糾弾させる安易な番組構成からして見たことある!と思った。
Kuuta

Kuuta