このレビューはネタバレを含みます
【僕は彼女の人生をポジティブに見れない】
全編を通して、主人公の「人生が何か満たされていない感」が漂う。
外側から眺める立場としては、彼女は「親に結婚や出産を強いられている」わけでもないし、「ゆらゆらと選択を回避している人生」について文句を言われているわけでもないし、彼女は何が不満なんだろう?とイライラする。インテリらしい、「口は達者だけど、何か行動することには理由をつけて逃げてばかり」な様子をずっと見せられている感じ。
なんか、いかにも今風な主人公だ。
ただ、カメラは彼女の生き方を肯定するように映していく。
僕は映画を観るとき、主人公に何かしらの変化が起きて欲しいと思って観ること多いし、今回も彼女がどう変化していき、何を選択するのか観ていたけど、結局本質的にはほとんど何も変わらない彼女の姿を見せられてガッカリした。
コミック作家との病院での対話を見て、「他人の人生を自分の人生に組み込む」ことに恐れていたけど、覚悟する話になるのかと思ったら、結局そうはならなかった。「一人で生きていくことを選択した」ともいえるけど、でもそれは彼女が美人でクリエイターとして才能があるから成り立つわけで、「ふわふわ生きている女性」の人生をこういう風に肯定するのはちょっとずるくないか?
「誰かに影響を与えたい(次世代にバトンを渡したい)」という承認欲求というか人生の意義は満たしたいけど、「自分の人生を削ってまで子どもや恋人に捧げたくない」という思いを両立させるためにクリエイターとして生きていきます。。って、どれだけの女性が選択できるだろう?と冷めた目で見てしまう。
この映画はいわゆるフェミニズム的な要素が強いと思うけど、クリエイターとして才能があるという半ば反則的な要素を出さずに、ポジティブに仕上げて欲しかった。
映像のギミックや演出は光ところが多く面白かった。