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コンパートメントNo.6のcyphのネタバレレビュー・内容・結末

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

いいからすぐにでも観た方がいい、と薦められてえ〜?と思いながら観に行ったけど、シベリア鉄道映画だからだった(シベリア鉄道三等車で大陸を横断したことがある) ビフォアサンライズを持ち出して本作を褒めてるひとを見かけたけどむしろ対極と思う、内省をしまくって生きてきた人間どうしの出会いと内省を一切放棄して生きてきた人間どうしの出会い あくまで個人の好みとしてだけど主人公のことがとにかく好きになれなすぎて、かつカメラがずっとぐらぐら揺れて酔うので心身共に好きじゃないタイプのストレスを感じた 恋愛を人生のトッププライオリティに置いちゃうくせに一切の主導権を相手に明け渡してしがみつく奴隷の恋愛をするひとのことがぜんぜん好きじゃない 異国語で恋や勉強や旅先での会話をしてるのはめちゃえらいと思うけど根が非モテすぎていーってなる 同室の男との関係を恋愛的なものに収束させていくのも全く乗れなかった

鉄道からの車窓、あるいは停車駅の街の風景から素顔のロシアが見れたのは懐かしくよかった 旅先ってそういうことあるよなと松井ケムリさんも都度言ってました 鉄道という移動の余地のほとんどない密室でそれでもトイレの窓から外の空気を浴びる、お茶を汲む、食堂車へ逃げ込む などの限られた移動を実践していくときの心地とかは映画とリアルを橋渡しするものとして彩度が高くよかった ムルマンスクの吹雪ロケも立派



追記 主人公の振る舞いが非モテだから嫌だったというより、監督自身が主人公の恋愛を終始"しょうもない"原動力と割り切って描いてるのが侮蔑的でいやだっただけな気がする 彼女の恋愛なんて所詮エリート層に混ざりたい・留学先のコミュニティに受け入れられたい・素敵な歴史を持つおうちの一部になりたい なんて欲望のすり換えでしかない だから彼女の行動はぜんぶ薄っぺらな現実逃避でしかないと、粗い解像度で断定的に描いたうえで急に微に入り細を穿たれましても……という困惑と不愉快さ どんなにつらい思いをしようが惨めな思いをさせられようが恋なんて素晴らしいに決まってるだろが そこに泥塗らないと描けない交流なんてくそくらえ
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