シミステツ

コンパートメントNo.6のシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ペトログリフを見に旅に出るラウラ。
恋人と行く予定だったが突然断られひとり旅に。
寝台列車で同室になったのはスキンヘッドでウォッカを飲み散らかし煙草の火花を散らしても気にかけない粗野な男。フィンランドではこんにちはは何と言う?さよならは?など不躾に聞いてくる男。
愛してるは?と聞かれたところでうんざりしたラウラは「ハイスタ・ヴィットウ(クソッタレ)」と答えるほど。

ふたりの寛解していくさまがとても愛おしく思える。人の先入観、盲目性。乗り合わせてきた同郷の人間がギターを弾いて居心地が悪かったりビデオカメラを盗んでいったりというところでも皮肉に描かれていた。

過去を知ることで現在を容易に知ることができる、という言葉が皮肉に活きている。結果的にペトログリフは見れていない、つまり過去を知ることはできなかった。リョーハについてもどんな人間なのか、どう生きてきたのかは知る由もない。それでも今ここの現在性、リョーハと過ごす日々が確かにその世界を知ることにつながっていた。
似顔絵というのも人を見ること、観察することの示唆であるし、絵の良し悪しがその人を適切に見れているか、ということでないという示唆であり、住所を教えて、というところも、人のつながりというものはそういうことではない、刹那性であったり、関係性における現在性を大事にするべきだというリョーハの感じ取り方が表れていたと思う。

ペトログリフを見たいという彼女の願いに寄り添い続けるリョーハの姿が愛おしいし、最後の車内でのシーン。「ハイスタ・ヴィットウ」がとても印象的で素敵でした。