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TANG タングのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

TANG タング(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

映画としては完全に子供騙しのレベル。子供向けならまだわからなくもないのだが、主人公がいい年した既婚ニートなので、大人をターゲットにしているのだろう。だとするとあまりに陳腐で低レベル。次々に登場する敵キャラも全員安っぽい。セットも安っぽく、かまいたちの二人がいるせいもあってか、もうずっとコントにしか見えない。アクションも酷かったなぁ。映画としてのテンポも悪く、大した話でもないのにダラダラと長いから観ていて飽きる。あんなに緊張感のない潜入シーンは初めて観たかもしれない。どうして潜入している最中に妻からの電話に出た挙げ句、ダラダラと身の上話なんか始めるのか。

住宅街に競走馬の牧場があるのとか、どうなってんの?原作は海外のものらしく、その辺を何も考えないで舞台を日本にしているから、違和感しかない仕上がり。近未来SFにしても、雰囲気が「近未来っぽい」だけで、全然画期的なガジェットとかテクノロジーは出てこない。ロボットが普通にいる以外は、今とほとんど変わらない感じ。とはいえ他のロボットも「いる」という情報だけで実際にはほとんど関わらないから、結局ただの嘘くさいCGの中にある現代社会にしか見えない。これは本当に致命的だと思う。

主人公がニートなのには過去のトラウマが影響している、と言われても、それは医者をやらない理由であって働かない理由ではないから。別に遺産や妻の稼ぎで食っていけるなら働かなくてもさして問題じゃないしね。で、トラウマをどうやって解消するかというと、タングの修理で、勘頼りの二択を成功させるというだけ。そこはどんなに些細でも何か理由を見つけて二択を片方に絞らないとダメじゃない?こいつ今後患者への処置を迷ったら勘で決めるの?奥さんは主人公が家のことをちっともやらないことにキレてたはずだったのだが、最終的には医者になるということでハッピーエンドなのもどうにも脚本が下手。

ただ、とにかくタングはかわいい。最初から最後まで無条件に主人公に懐いてちょこちょこついてくる様子は、かわいい以外の何でもない。というか喋り口調も含め、もう完全にただのかわいらしい幼児なのだ。あんなにただただ懐いてくる幼児は、そりゃかわいいわ。「友達」というワードが劇中何回も強調されるが、どう見ても親子である。宝物の100円玉を使って主人公のために買ったコーヒーを、こぼしまくりながら必死に駆け寄って来るシーンは、子持ちの親なら泣いてしまうことだろう。でも実際には主人公は親ではないのだから、タングが懐く理由はしっかりと必要だったと思う。じゃないと結局、危険な場所から逃げて来て助かりたいから防衛本能で懐いたことになっちゃうよ。

二宮和也と満島ひかりのコンビは、こんな作品ではなくてもっとシリアスなちゃんとした映画で観たかった。なんか今作では二宮和也がすごい下手に見えるのだが、演出も下手なんだろうな。台詞やリアクションが全部凡庸でリアリティゼロだもの。ただ、泣きの芝居は相変わらず見事。特に、記憶を失ってしまったタングに主人公の健がかける「疲れちゃったね」の一言には物凄くグッと来た。あの台詞だけ妙な実在感がある。と思ったら、どうやらあれは二宮のアドリブらしい。いかに監督と脚本が酷いかということだな。

市川実日子は完全に無駄遣い。あのキャラ自体要らないだろ。あと二宮のバーターでジャニーズの子が出ていたが、彼の演技は恥ずかしくなるレベルで酷かった。ただナルシストという役の設定自体もキツかったので、演出がクソなだけかもしれない。いやでもあのナルシスト演技はないよなぁ。この映画、キャラクターが全部薄っぺらい。しかも次々と出てくるだけで、その後は一切関わりもない。本当に脚本が幼稚。占い好きのキャラとか、何だったの?

先述の敵キャラもペラペラなのだが、「実は黒幕は武田鉄矢で、小手伸也とかまいたちはいい奴」っていうなら、小手伸也たちは普通に最初から全部説明すれば良かったんじゃないの?何でいきなり強硬手段に出て、いざ急がないとっていうクライマックスにのんびりと説明し出すのか。展開の都合以外のどんな理由があるのか。無いんだろうなぁ。

ラストは、主人公に子供ができて終わるのだが、これもちっとも上手く物語にハマっていない。このオチにするなら最初から妻の妊娠を明らかにしておいて、タングとの触れ合いを通じて父親としての自覚に目覚める話にした方がよっぽど良かったと思う。どう見ても親子だったし、主人公がタングに向ける目線は父親のそれだったし。

「大人も子供も楽しめる感動作」にしようとして、どこにもハマらない陳腐な仕上がりになってしまった作品。
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