ユーライ

ヒルコ/妖怪ハンター レストア&リマスター版のユーライのレビュー・感想・評価

3.6
『鉄男』に続く二作目に「原作が諸星大二郎、主演は沢田研二」を撮らせようと決断した人は誰でせう。ミニマルでディティールを追求する資質とオーソドックスな物語構造が合ってない。本作でメジャーの体制に向いていないことが分かってより独自の道へ突き進んでいくのだろうが、これがもっとウケていたら違う未来もあったかも知れない。らしさとしては少年の憧憬する少女が、ちょっと病的なまでに清楚を纏う辺りか。稗田礼次郎の造形は、石坂浩二の金田一耕助を彷彿とさせ、画面の向こうからやって来て帰っていくのまで含めてオマージュか、生首が飛び血が噴き出るショック演出も同シリーズの市川崑、日本の原風景的な舞台。に『物体X』な密室アクションが組み合わされる。あの夏の日の思い出に初恋の少女と頼りにならないけれど嫌いになれない変なおじさんがいた、で締める異様な後味の良さ。紛れもなくジュヴナイル・ホラーで、特殊メイクをフィーチャーしたことと含めて『学校の怪談』に繋がるのか。嫌過ぎる用務員のおじさん室田日出男、まだ神経質そうな男が似合う竹中直人の周りにデロデロなクリーチャー……90年代初頭ならではのアクがここにはある。
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