Foufou

牛首村のFoufouのレビュー・感想・評価

牛首村(2022年製作の映画)
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清水崇とはどういうクリエイターなのか。

ハリウッド版『呪怨』の凱旋インタビューだったと思いますが、それを見たとき、拍子抜けしたのを覚えております。才気走ったオーラを期待していたのですが、いたってフツーといいますか、フツーどころか、人の良さが滲み出ている感じでした(あくまで個人の感想=偏見です)。

だから、『呪怨』以降何作か追いかけてみて、ガッカリするというより憤慨に近いものを感じるたび、あの、人の良さそうなお顔を思い出しては、この人が映画をお撮りになるのは、才能とはまた別の力学が働いているのかもしれないとそこはかとなく思うのでした。昨今の村シリーズのサブスクでの一斉公開にしても、だから同じ力学が働いているのだろうと思って驚きもいたしません。

本作は工藤静香と木村拓哉の愛娘Kōkiが主演。本作をもって映画デビューだそうです。デビューにして主演。かの竹内結子が『リング』で銀幕デビューして冒頭でクローゼットの中で亡くなる役を演じたことを思えば、大人の事情を察するにあまりあるというものでございます。たとえどんなに凡作を量産するクリエイターであっても、ハリウッドで百億ドル以上を稼いだとなれば、大物監督の一人であることに変わりはないわけで。

主演のKōkiは目のぱっちりした可愛らしいお嬢さんでした。スタイルも衣装も持ち物も、今時の高校生とは一線を画した感じです。たとえユニクロを着ていても、そう感じられるだけのオーラをお持ちではないかと。惜しむらくは演技で、お父様そっくり(演技って遺伝なのか?)。今後大成するにあたっては、似ているより、似ていないの路線がよろしいんじゃないかと(ほら、あれ、彼女とデートしてるときに、一々彼女のお父さんの顔がチラつくの、ちょっと興醒めじゃないですか……)。

お話はいたずらに複雑にし過ぎた感がございます。親切心からなんでしょうが、説明的なシーンが多過ぎて、これがテンポの足枷になっている。タダでさえチープ感はハンパないわけですから、多少観客の頭の中に「?」を残したままでも、ここは1時間30分で切り上げる大鉈を振るう必要はあったでしょう。さすがに2時間は長すぎるって。見にきたカップルの何組かは、責任のなすり合いの挙句にそれが遠因で別れたかも知んないよ。。

「牛首村」ってのは、語感からすると「打首村」に通ずるんでないの? 話の落とし所はそこじゃないのかしら。双子が産まれるたびに牛の首を調達できるくらいなら、東北の貧村も苦労はないんだって。口減らしとか人柱とか、そんな伝承は各地にゴロゴロしています。それを今更勿体ぶって都市伝説に仕立てても、怖がるのはウブな小中学生くらいなもんじゃないか。穴に落ちたKōkiたちへ村人三人が梯子を下ろしにくるシーンね、ありゃ、ひどいというより、わけがわからんよ。なんであんなシーンが映画=商品として市場に流通可能なんだ? 日本映画って、なにかと、叫んで、目を剥いて、腰を抜かして、わななきゃいいと思ってる節がある。演技による現実への冒涜というやつですよ。

小学生の不肖の息子が、都市伝説とか怪談とかに惹かれているもので、それでいっしょに見てみたという次第です。こんな機会でもなければ、日本映画の一端を覗き見るなんてこともないわけですから、いい勉強になりました。

本作の興行収入、5億6000万円とございました。当然黒でございましょう。ちなみにこないだ見た日本映画『すばらしき世界』の興行収入が5億8000万円。清水崇のコスパの良さがわかろうというものです。
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