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アリスとテレスのまぼろし工場のdendohのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

めっちゃセカイ系だった。
まだ他のレビュー観てないけど、震災とかコロナ禍とかを踏まえて語っている人は多いんだろうな(笑) ロケハンは君津らしいけど、山と海に囲まれた町に製鉄所があるよいうシチュエーションは如何にも釜石っぽい(2023/09/16追記 パンフによると釜石にも行っているようだ)。ただ現実の釜石は復興しているので、「爆発事故で廃れた設定」の舞台として固定するのは流石に憚られたのだろうか。

彷彿させられた作品は漂流教室、SONNY BOY、FF10、ゼーガペイン、SSSS.GRIDMAN。映像表現は結構面白い。ひび割れの向こうに現実の見伏が見え隠れしていて、ひび割れが大きくなると行き来が可能になるとか、アニメならではの表現だと思った。

正宗側視点では、オリジナルではない作られた存在としてどう生きるかという主題。五実視点では、失恋し、夢から覚めて現実を如何に生きるかという主題。この双方の視点があるせいで、何をやりたいのか分かりにくいという印象はどうしてもあったかも(そう言えば、睦実視点では子離れの話でもあるのかな)

恋愛や性の表現については思わず目を背けたくなる生々しさで、観ていて嫌悪感すら覚える(特にパンツ見せシート、キスシーン、消えちゃった子の描写、政宗の太っちょのエロい友達の言動)のだけど、これが癖になる。こういう生々しい描写は如何にも岡田麿里作品らしい。

しかし今回も結局は10代同い年男女の恋愛に帰結してしまった。親子間の恋愛は成就せず、同性愛者は悪役で、正宗母も良き母親として生きるために叔父との恋愛を避ける。『荒ぶる季節の乙女どもよ。』もそうだったけど、規範を壊そうとする登場人物を肯定的に描く割に、結局は規範を逸脱できないのは本当に残念。「鉄血のオルフェンズ」ではポリアモリー(と一応同性婚)を描けてたのになぁ。いつか岡田麿里脚本の本気のクィア作品を観たいんだけど、本人的にはそういう方向性で描きろうという意欲はないのだろうか。
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