矢吹健を称える会

モガディシュ 脱出までの14日間の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

3.8
 労作だし、近年の韓国映画の中でも突出した内容ではないですか。「よく撮ったなこんなの」という意味では、『トップガン マーヴェリック』にも負けていないだろう。リュ・スンワンはもうここまでの作品を手掛ける作家なのだ……『軍艦島』も見せてくれたっていいじゃないですか……。

 正直、序盤の描写はあまり感心しなかったのだが、内戦勃発からのテンションがすさまじい。
 冒頭の恐ろしい襲撃シーン含め明らかに作り手は『トゥモロー・ワールド』を意識しているのだが、均衡を保っているように見えた街が手のつけられない暴力に覆われて、どんどん荒廃していく恐怖感は、本作特有のものだろう。少年兵の禍々しさもいい。
 終盤の領事館への移動シーンでの、縦に4台連なった自動車のフロントガラス/リアガラスをカメラがぶちぬく長回しシーン(もちろん、CG処理だろうが)はやっぱり度肝を抜かれた。『アシュラ』ですでに経験済みとはいえ、ここまで発展させられたら感動せざるをえない。

 また、「呉越同舟」状態になってから、演者たちの魅力が出てくる。チョ・インソン/ク・ギョファンの幼稚な対立と、キム・ユンソク/ホ・ジュノの慎重な歩み寄りが、スリリングで良いと思う。ただ、ラストのキレの悪さ(それがビターで良いという意見もあるだろう)には、若干不満を覚えた。