何か···冒頭から不思議だったな。
TVから流れるのはバイキングのネタなのに、お婆さんが取るのは黒電話の受話器。令和4年の話なのに、所々そこはかとなく漂う昭和の雰囲気に、これはいつの時代の話なんだろう、とちょっと戸惑った。加えて、県警の名前は張り紙で読めず、車のナンバープレートも微妙に読み取れなくて、其処が何処だか分からない感じにもなっていたなと思う。時代も場所も何だか曖昧で、輪郭がぼんやりとしているなぁという印象が最後まで拭えなかった。
「昔は良かった」そう言って今を嘆く成瀬は、典型的な時代に取り残された者という感じで、コンプラという言葉さえまともに言おうとしない姿は、厄介この上なかったな。そんな成瀬が音楽隊に送り込まれるんだから、当然上手くいくはずなんてなくて。音楽隊の面々も一致団結してやってるわけではないから、ちょっとした諍いは日常茶飯事という感じだったし。とりあえず、市民の前で言い争うのはみっともないから止めようかって、こっちが止めたくなったよ。
刑事一筋30年。法子との約束なんて簡単に忘れられるぐらい、刑事としての成瀬のプライドは結構固いものだと思ったけれど、案外早く吹っ切っていて、そのスピード感にはちょっと驚いた。軍曹と呼ばれた鬼刑事も、現場に立てなくなったらあっという間かぁ。···定年退職前に打ち込めるものに出会えたというのは、良かったんじゃないかなと思う。
想像した通りにストーリーが展開していくこともあって、いまいち入り込めはしなかったけれど、吹き替えなしで挑んだという演奏は楽しかった。全ては、ラストの演奏をみせるためにあったという感じかな。
#99_2022
