もっと公開してすぐ観に行くべきだった。
シネコンの一番でかいスクリーンで観たかったな。
脚本ほんとに凄い。
特に文のパート抒情的に描かれていて見事としか言いようがない。松坂桃李の覚悟、あの手の震えが思い出すだけでも胸を抉られる。文はどれだけ辛かったのか。
月の使い方もさすがだった。ホン監督がこの物語の美しさを担っていて、光を操り水を制した業、本当に人間の仕事か?と疑いたくなった。自然を司る神なのか?と聞きたかった。(誰に)
ふざけてしまいたい気持ちはここら辺までで。人があまりにも大きな感情を抱えるときどうしても美しく映ってしまうのは、映画が知ってしまった真実なのだと思う。
原作は主に更紗の感情の説明が多い(その説明も寄り添わずにはいられない正直さというか、があって好きだった)から、映画でどれだけ描くのかも李監督だからすごく楽しみにしていて、役者の表現を最大限に引き出して観客の心めがけて光も闇もぶん投げるみたいな演出が留まるところを知らないなと思った。
レビューでかなり多い横浜流星の評価、確かにだった。彼自身ずっとちゃんと純度の高い役者だったってことなんだなと思った。彼こそ「人は見たいものしか見ない」が当てはまる人なんじゃないかと。
原作にはない亮くんの最後、頼りない手が悲しかった。
人と人がある一定のボーダーを超えて築いた関係性に説明なんて到底つけられなくて、もう二人だけの空気や言語が生まれてしまったら他の誰もわからない。
多分、「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない」という言葉も、声が聞こえる距離に誰かがいても更紗にしか聞こえなかったはずだ。
手を握れば強く握り返されたこと、それ以外に何が大切だと言えるだろう。
ごく稀に、夜道を歩いていて月の光がすぐ側まで感じられることがある。この作品はその光のようだと帰り道に考えていた。