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流浪の月のyukkeのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.2
圧倒的な演技力。
こだわり抜いた演出を感じる映画。

すずちゃんの感情表現力
流星くんの新境地
也哉子さんの圧倒的存在感
みんな凄かったが、
私は松坂桃李の凄さを一番感じた作品だった。
役のためにダイエットされたということもあるのだろうが、
最初の顔のアップシーンが強烈で、
これが桃李くん?個性を完全に消せるのか?と
少し怖くなったぐらいだった。

そして、ふみが発する一言一言が
とても重くて切なかった。


「あの時握ってくれた手の感触だけを頼りに生きてきた」

他人から受け取る手のパワーというものを私自身よく感じる。親に繋がれた手、恋人と繋ぐ手、握手から受け取るエネルギー、その感触は人にとってとても大切なものであるような気がしている。


「私はそんなに可哀想じゃない」

他人の物差しで決めつけられることの違和感。
もっともっと浅い事だけど
グループや組織に入ると、ありもしない事を囁かれ、つまらぬ噂の的になっていると聞かされ、うんざりした過去。

そんな場所から離れたいから、私はいつもグループから距離を置いてしまう。
結局どこへ行っても自分の本質は変わらないし
人というものは噂から離れられたりしない事はわかっているのだが。

全ての人に自分を知ってもらうことは難しく、
自分を変えるのか、
他人を無視するのか、
どちらが良い選択なのか、答えはでていない。


「他人には知られたくない事」

でもどこかで、知ってもらって受け入れてもらえたらという心の奥底にある想い。
話すと楽にもなるけど、新しい噂話の標的になる怖さもある。結局自分は他人を信じきれない弱い人間なのだろう。

私もふみ達のように、傷付いたら流れていきたい。私に永住の地はない。そこで耐えられなければ、流れていけば良いと思うし、流れて、また新しく作り出す力は培ってきたように思うから。


頭の中を色んな感情がめぐりめぐる映画でした。
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