ろく

流浪の月のろくのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
3.0
僕は納得しない。

最初に結論ありきの映画だと思って見てしまった。確かに「誰が正しいか」の論理から「誰も正しい/正しくない」の論理は必要なの。でもこの映画はその劇伴や映像、さらには俳優の技量で「正しい」ものにしてしまっている。僕はどうにもそこをペテンに感じてしまった。

だからか広瀬すずが泣けば、横浜流星が吠えれば、松坂桃李が感情を走らせれば「私たちのことも理解して」。いやそれはわかるんだし理解も必要なんだ。でもね、そこを大げさにしてしまうことでもはや「考える力」を奪う映画なの。それが僕にはどうもなぁと思い最後まで乗れなかった。

ストックホルム症候群でしょっていうツッコミは遮断してもいいのだけど、少なくとも彼の行為は「犯罪」なんだ。それを背負いながら生きてくようには見えなかった。そして広瀬の発言も。このような「自己の世界からの救済」と「世間としての犯罪」は古くからあるし(現実事件ですら千石イエスの件などもう前例がある)それほど新しいとも思えない。よくあるテーマをそれとなくいい音楽と映像で「映画」にしたに過ぎないのでは、そう感じてしまった。

ただ子役の演技はよかった。これは大人が「俳優だから」と見ているのに子供はそう見てないからという僕側の視点もあるだろう。それでもこの映画は(僕にとって)「俳優」がノイズになってしまった。とくに横浜流星が僕にとってノイズで。観ているだけで五月蠅く感じてしまった。

たまに思っているのだが日本映画の最大の悪癖は「最初から結論が出来ている」映画が多いということかもしれない。
ろく

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