Pinch

流浪の月のPinchのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
4.2
人から目を背けられながら生きざるを得ない存在のことは誰もが知っている。目に見える外形から複雑な内面まで、さまざまなスペクトラムの規準から外れた何らかの例外が、全ての人間の中に備わっている。だから現実はつらい。だったら例外を処分すればいいじゃん、という考えの行く末がろくでもないことは、歴史が検証し文学が予言するところだ。

つらくても生きなくてはならないという現実は、いつの世も変わらない。しかし、つらい現実の狭間に、ときに、真に美しい内的体験とその記憶を垣間見ることがある。それさえあれば何とか…。

現実はこうはいかないと重々承知していながらも、フミには全てを投げうって寄り添うサラサが、サラサにはかけがえのない追憶を体現するフミがいてよかった。抑えの効いた、上手な演出だと思う。
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