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ビーボのLCのレビュー・感想・評価

ビーボ(2021年製作の映画)
4.2
楽しかった。

クレジット画面で「 Lin-Manuel Miranda 」の名前を見て、そりゃあ音楽が魅力的なわけだなあと思ったら、Vivo の声もあなただったのかあ。

作品の題名でもあり、主人公の名前でもある Vivo は、英語にすると「 I live 」のような感じ。私は生きる。
そして、この動詞活用の形は「現在形」と呼ばれるものなのだけれど、現在形をスペイン語では Presente (プレセンテ)と言う。英語でも Present と言うけれど、「現在」と「贈り物」は同じ言葉で表せるんだね。
そして、作中で「 ¡Presente! 」という曲が流れる場面がある。
その歌詞の一部は、次のようなものだ。

Que diga ¡presente!
Que diga ¡presente!
Pasado, futuro, ayer y mañana
Que diga ¡presente!

(Presente と言ってね!
Presente と言ってね!
過去、未来、昨日と明日
さあ言って、Presente と!)

この短い歌詞に込められた想いに、指先が触れるような感覚を覚える。
「今日」を「私は生きる (Vivo)」、それは「プレゼント」だと言えるんだ!という、明るくあたたかなメッセージを、あの日手を振った彼が生きる音楽で紡ぐのだ。

1つの大切な曲をマイアミへ届ける為に、キンカジューと少女が冒険をする。
穏やかな町並みや大きな街、そして動物たちの生きる景色を賑やかに駆け回る。
キンカジューも少女も違った音楽性を持つキャラクターなのだけれど、2つの魅力が融合する場面はどれも印象的だ。奏で、記し、そうして彼らは大切な曲を確かに届け、託す。

キンカジューも少女も、他者と衝突したり協力したりして、それぞれの関係性の変化も描かれる。
どんなにわかってもらえなくても、彼らは彼ららしく、周囲もその人たちらしく、今を生きる。
その為、キャラクターの可愛さに魅せられたり、時には緊張したりしつつも、自然と音楽に揺られるような気持ちで楽しく物語を見守ることができる。「歌詞を旋律に乗せる」ことを説く場面があるけれど、たぶんそのような感覚。

海を眺めながら涼しい風を感じて食べる熱々の Croqueta (クロケッタ、コロッケのこと)は美味しい。間違いない。私はハムの入ったクリーミーなクロケッタがお気に入りで、異国の港街をお散歩する時によく買っていたなあなんて思い出したりもした。
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