LC

ポリス・ストーリー 香港国際警察のLCのレビュー・感想・評価

3.4
しんどかった。

アクションが凄い。ただしんどい。でも、身体が傷付く描写がしんどい系ではない。
例えばガラスに突っ込んでパリーンな場面が「大きな見せ場」として満を持して出てくる感じではなく、パリーンパリーンパリーンパリーンと際限なく人がガラスに突っ込む。そういうしんどさ。
刃物向けられた経験のある者としては、刃物の場面はきっつかったよお。「あっぶねえ!あっぶねえ!」ってなる。何か安心して見られない臨場感。

物語は面白かったと思う。
仕事はきっちりやる。上司の指示にもキビキビと従う。女性の前では見栄を張る。色仕掛けにはまんまと流される。結構ちゃらんぽらんとした印象。
そんな主人公が、人情のない上司に「状況証拠はあるので、殺人で捕まえるよ」と言われ、言い返すし、余裕ぶっかまさないし、おちゃらけずに劇終まで駆け抜ける。

自分も人間だ。
中国の人って、「個人に内在するもの」を認める意識が強いと聞いたことがある。全体を構成する一部ではなく、ひとりひとりが独立して持つ各々の異なる考え、気持ちを守る姿勢。
そういうことを見聞きしていたからか、警察として「チームで成し遂げるんですよはっはっはっ」という場面の後で、簡単に「逮捕するね」と切り捨てられる流れは、少し興味深かった。
主人公は、真面目一辺倒ではなかったけれど、正義感はあった。ちょっとズルしたりするけれど、与えられた指示の通りに動けるようにしていた。
しかし、上司の判断だからって、黙って逮捕されることを拒否した。自分の正義感や警官としての評価が安易に潰されそうになった時、彼は黙って従うことを選択しなかった。
全体の為なら犠牲になる部品があるのは仕方ない、という考え方に銃口を向けたわけだ。

それにしても、成龍とはかっこいい名前だ。簡体字だと成龙という字になるらしい。最近のんびり独学していて、少し中国の漢字に親しんでいるので、興味深くクレジット画面の文字を追っていた。
「ドラゴン(身体が蛇状の方)に成る」という名前が、作中の主人公のスイッチの切り替わりと少し重なる感じがするね。
彼のことを調べてみると、「他还引发了一种国际流行文化现象 (彼はある種の国際的なポップカルチャーの火付け役でもある)」という文があった。国家間を横断する現象を引き起こした、ということだよね。なるほど、「兎に角すごかった」という私の衝撃は、世界から見るとだいぶ時差があったわけだな、と思ったりする。
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