ろく

サマーゴーストのろくのレビュー・感想・評価

サマーゴースト(2021年製作の映画)
3.2
乙一的な展開だなぁと思って見ていたけど、豈図らんや、やはり乙一原作でした。なるほどねえ。

話は死んだ女性と遭おうとする高校生三人組の話。三人とも「死のう」と思っている。はいはい、平成世代のセンシティブ作品ねと上から目線(よくないよくない)。

乙一の作品はどれも「死」を切り取って「生」の大事さを訴える。でも正直、安易だなと思い本を読んでもそれほど好きではなかった(ZOOやGOTHは読んでいる)。確かに「死」を目の前にするから「生」がわかりやすくなるんだけど、それはあまりに簡単じゃないかしらんと言う気持ちが拭い去れず。正直「あまり本を読んでない人のための本だよね」とやはり上から目線(良くない良くない)。

この作品もそうで確かに刺さるんだけど、そんな「刺さる」にちょっとうんざり。「死」は切り札だからねえ、物語を進めるための。それを考えると刺さっていてもどうも「安易でないかい」と思う気持ちが抑えられず少し冷めてしまった自分がいた。

それでも最後のほうの映像は好き。アニメならではの表現もあり、また「若い人にはこれはありだろ」って気持ちもあるんで全否定ではない。若いころ観ていたら十分感涙していたんじゃないのって思いもやまず。ただ僕はそれを肯定するにはすっかりすれっからしになってしまったんだよ。これは僕の問題かもしれない。「死」は大事だからこそ(ハイデガーは現存在であることを徹底的にこだわった)、エモーショナルの道具として安易に使ってほしくないんだよな。

40分と短い作品なんで生徒には薦められる。その点ではよし。
ろく

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