うかりシネマ

猿の惑星:創世記(ジェネシス)のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

一作目以前の時系列を描くプリクエル三部作の一作目。
現代、アルツハイマーの治療薬を投与され高い知能を得たチンパンジー・シーザーは、実験の管理者だったウィルの元で育つ。

ウィルがシーザーを殺処分しなかった理由は決して優しさではなく、命を奪うことへの恐怖で描かれる。これは終盤、二匹の猿の行動と重ねられる。シーザーが殺人を犯さない理由は優しさか憐憫かは分からないが、恐怖のような消極的理由ではなく、明らかに一線を引いている。
『猿の惑星』は人類史のメタファーや、日本人や黒人への恐怖を類人猿を通して描いたが、本作では高知能を持った猿の目線まで下げることにより、同等の知能を持つ者に囚われる恐怖をホラー的に演出する。
中盤のこのパートは『猿の惑星』の前半のように居心地が悪く、擬人化された動物を使っているのでさらに不快な気分にさせられる。

後半では抑圧された分、際限ない暴力が描かれる。誰が悪いわけでもない、ただ過ぎた技術を持ってしまった人間が報いを受けるだけで、カタルシスと虚無感が気持ちいい。
遠心力を使った猿のアクションはダイナミックで、当時のCGでできる表現を詰め込んだ映像も楽しい。
ただ賢い猿の集団が解き放たれただけで人類が滅亡することはなく、そこについても破滅の足音を配置するのが恐ろしい。